NHKでは「侍と描写された!」などと報じられた地元メディア『Sazandegi』の表紙だが、実際はキャプテン・アメリカ風に揶揄されただけである
6月13日、日本の安倍晋三首相はイランの最高指導者ハメネイ師と会談を持った。事実上の「トランプ大統領の特使」としての役割である。トランプが「令和」初の国賓として訪日したのは、そのための下準備もあってのことだろう。
しかし、安倍首相は「トランプの特使」としての役割を全うできたかと言えば、結果は明らかだ。
日本国内での日本語による報道ではあたかも何か成果があったかのように報じられているが、現地メディアやスペイン語メディアとはまるで正反対の様相なのだ。(参照:「
El Pais」、「
HispanTV」)
安倍首相と会談した最高指導者ハメネイ師は、「トランプがメッセージを交換するに値する人物だとは思われない」「彼への返事はない。回答しない」と述べて、安倍首相のトランプに依頼された米国との関係修復のための特使としての務めを一蹴した。
更に、同師は「米国がイランと誠実な交渉に関心があるとは思えない。トランプのような人物からそれを望んで来ることはないからである。米国の官僚の間には誠実さというのは頻繁に見れらるものではない」と確言した。
一方のトランプは、訪日中に安倍首相にイランへのメッセージをことづけておきながら、帰国するや新たにイランの石油化学産業に制裁を科した。このこともあり、ハメネイ師は、「そのような人物が本当に交渉を望んでいるのだろうかと疑いたくなる証拠である」とも付言した。
更に安倍首相を前に「イスラム共和国は米国を信頼しない。包括的共同行動計画(PIAC)の交渉から得た苦い経験は二度と繰り返すことはない。プレッシャーのもとでは自由で見識ある如何なる国家も交渉に応じることはない」とも述べた。
また、「核兵器には反対する。そのような兵器を製造することは我々の宗教令がそれを禁じている」「しかし、一旦核兵器を製造するようになると米国はそれに反対しても何もできなくなる、そしてそれが禁止されても我々にとって障害にはならない」と述べてイランの断固たる姿勢を安倍首相の前に披露した。(参照:「
El Pais」、「
HispanTV」)
一方、安倍首相は米国はイランの政治体制を変えようとする意向のないことをトランプ大統領のメッセージとしてハメネイ師に伝えた。しかし、同師はそのような米国の意向は「偽りだ」と指摘した。そして、「仮にそれをやったとしても、達成できないだろう。この40年米国政府はイスラム共和国を打倒しようと試みたが失敗に終わっている」と断言した。(参照:「
HispanTV」)
こうした安倍首相とハメネイ師との会談の内容は即座に英語に訳されてネットで報道された。それは米国の関係修復へのイラン側からの意向がないことを関係各国に出来るだけ早く伝えるためであろうと受け取られている。
また、安倍首相はロウハニ大統領に大阪で開催されるG-20への出席を招聘したという。ハメネイ師が米国との関係修復への意向はないことから、イランの専門家の間ではロウハニ大統領の出席には懐疑的な見方をしているそうだ。