――塾ではガッツリ働いていたんですね。
呂布:「そうでしたね。週5から週6、フルタイムで働いていましたから。でも途中から、土日のライブで稼ぐギャラがその給料を上回ってきて、『これはマジでやってる意味ないんじゃないか』と思って辞めました」
正社員:「その社会人経験が活きていると思うことってあります?」
呂布:「ありますね。会社という組織では、週に何回も会議をしてアイデアを出し合い、空き時間には他社を研究してデータ作り、『どうすれば生徒が増えるか、成績が上がるのか』と常に考えている。そして全力で実践と検証もする。『これ、同じことを音楽でやったら絶対売れるやん』と思いましたね。それがなかなかできないんですけど」
――簡単にはできないことでしょうね。
呂布:「ミュージシャンは自発的にそれをしなきゃいけないですけど、塾の仕事では上からやれと言われてやる環境でしたから。今の音楽を分析して、自分で営業回って、周囲からアイデアも集めてということができたら、それは売れるはず。同じ作業を、僕は根本的には興味のない塾でやっていたわけですけど、やるなら音楽のほうがいいなと思いました。音楽以外のことでも同じだと思いますよ。会社でやらされているような努力を、自分の趣味に費やせば、絶対にメシくらいは食えるようになるはずです」
正社員:「かなり真面目に働いてたんですね。俺みたいに全然ダメリーマンじゃない!」
呂布:「マジメにはやってたよ。でも、ダメリーマンだった。営業の前に配送の仕事もしていたんですけど、決められたルーティンを続ける仕事で、それは本当にダメでクビになりました。歯抜けのオッサンとかができることが僕は全然できなくて、決められたことをこなすのは本当にダメなんだなと。それで『営業だったら口が達者だったらなんとかなるかな』と思ったんで営業にいきました」
正社員:「何を扱う配送の仕事だったんですか?」
呂布:「病院に薬を納品する仕事ですね。注文書を見て倉庫から薬を選んで、時間どおりに持っていく仕事だったんです。似たような薬がブヮ―っと並んでいて、『しっかり何回も確認しろ』と言われるんですけど、僕は何回確認しても漏れがあるんですよ。向いてねーなって思いました」
――逆に営業のほうは口のうまさで何とかなったと。
呂布:「そうですね。生徒をたくさん入れて、夏期講習もたくさん取らせればいいだけなんで、それは割とできました。子どもの相手をするのも嫌いじゃなかったし、嫌な仕事でもなかったので、『もし音楽で食えなくてもこれで食っていけるな』とも思いました」
――足掛けのつもりの仕事という話でしたけど、全力で向き合ってはいたんですね。
呂布:「やらないと『どうなってるんだ! 数字上げろ!』って怒られますからね。でも結局一年で辞めちゃったんですよ。教室長として先生も生徒もぜんぶ自分で入れる仕事を一年やったあと、別の教室に異動になると言われて。その頃には音楽のほうがサラリーマンの給料を上回っていたし、また一から教室の仕事をするなら、もう音楽だけに絞ったらいいかなと思って辞めました。もし異動がなかったら、もう少し長く働いていたかもしれないです」
<構成/古澤誠一郎>
【MC正社員】
戦極MCBATTLE主催。自らもラッパーとしてバトルに参戦していたが、運営を中心に活動するようになり、現在のフリースタイルブームの土台を築く
【呂布カルマ】
ヒップホップMC。愛知県名古屋市を拠点に活動。JET CITY PEOPLE代表。最新シングルは4月リリースの『SAMSAVANNA』。リリースや出演の情報はTwitterアカウント
@Yakamashiwaで配信中