「このままいけば恐ろしいことに。安倍内閣は“亡国の政権”だ」<小沢一郎ロングインタビュー第2回>

都市と地方、正規雇用と非正規雇用、さまざまな格差を解消していきたい

小沢一郎インタビュー2-2 日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の経済大国でありながら、先進国の中でも貧困率の高さで知られる。厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、7人に1人が貧困のさなかにある。母と子の一人親世帯では半数以上が貧困に苦しんでいる。 「安倍政権が新自由主義的な政策をとり続けた結果、日本中でさまざまな格差が広がっています。都市と地方の格差。正規雇用と非正規の格差。社会保障制度でも給付が減り、負担だけが増えて生じる格差。  都市部では非正規雇用であっても、それでもまだ余裕があります。当面の生活に困っているわけではない。だから、20~30代の層はもともと投票率が低い。  投票に来ても、『今のままでいいじゃないか。せっかく給料も出ているんだから。野党は余計なことを言わないでくれ』という考えで、与党を支持している人も多いようです。僕はその人たちに言いたい。『景気が悪くなったら、真っ先に首を切られるのは皆さんですよ』と」  今や就業者の約40%が年間300万円以下の収入しかない。生活保護水準以下の者は20%以上を占める。その多くは40歳未満。相当数が健康保険に未加入で、年金保険料を払っていない。彼らの声を代弁する政党は見当たらないのが現状だ。新生国民民主党が「ロストジェネレーション」の支持を取りつけていくには何が必要なのか。 「発想を転換して思い切った政策を打ち出さなければいけません。僕は非正規雇用のクオータ制導入を考えています」  クオータ制とは企業の雇用に一定数の割り当てを設ける制度。女性やマイノリティーの社会進出を促し、働きやすい社会を作ることを目指すものだ。 「『非正規をゼロに』と企業に要請するのは現実的とは言えません。『非正規を正社員並みの待遇に』といっても、事態が進展するとは思えない。コストダウンのために経営者は非正規を増やしてきた経緯があります。  企業も雇用を守らなければならないので、コスト意識には敏感です。だったら、「非正規は○%まで」と上限を定めればいい。パーセンテージは議論するとして、政権交代したら、この非正規クオータ制を法制化したいと僕は思っています」

こんなバカな政治は早くやめさせないといけない

小沢一郎インタビュー2-3 中国経済の落ち込みもあり、世界的な景気後退局面の到来が指摘されている。特に深刻なのは地方だ。小沢氏の地元も決して例外ではない。 「僕の生まれ故郷は岩手県の旧水沢市。合併して現在は奥州市となりました。人口は11万9000人ですが、毎年1000人ずつ減少しています。出生率・死亡率が今のままだと、2100年には日本の人口が現在の半分以下、5000万人になります。奥州市の人口はそのころ8万人減で2〜3万人。半分以下どころの騒ぎではありません。しかも大半が高齢者。これでは地域社会は成り立たない」  地方の現状を知るだけに小沢氏の憂慮は深い。言葉を選びながら吐露した。 「こんなバカな政治は本当に早くやめさせないといけない。このまま行けば、恐ろしいことになる。安倍内閣は“亡国の政権”です」  国の統治もたがが緩んできている。安倍首相の資質と長期政権によるたるみによるものだろう。森友学園問題、加計学園問題、統計不正と、かつてなら一発で内閣が吹っ飛ぶほどの不祥事が相次いでいるにも関わらず、政権は安泰だ。 「安倍内閣の閣僚や与党幹部は何かあると、全部官僚のせいにします。これでは誰もついてこない。役人も『それなら、一番無難な現状維持で。余計なことはしないでおこう』となる。政治家がしっかりした展望と姿勢を見せ、責任を取りさえすれば、霞が関はついてきます」 【小沢一郎氏プロフィール】 1942年岩手県水沢市(現奥州市)生まれ。1969年、自民党公認で衆議院選挙に出馬し、27歳で初当選。田中角栄氏の薫陶を受ける。1987年に竹下登、金丸信氏らと経世会を旗揚げ。’89年に幹事長に就任するなど若くして自民党の要職についたが、1993年に自民党を離党し細川連立政権樹立に尽力。2009年の鳩山政権では幹事長に就任。2012年、民主党を離党し自由党を結党するも2019年に国民民主党へ合流。今年12月28日、在職50年を迎え名誉議員となる。 文/片田直久 写真/大房千夏
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