この背後にいる暴力組織というのは、M-13と呼ばれる犯罪組織だ。
現在、中米(エルサルバドル、ホンジュラス、グアテマラ)では若者が中心となったこうした犯罪組織が深刻な社会問題になっている。彼らは犯罪(恐喝、強奪、殺害、麻薬密売、誘拐など)を犯して資金を稼ぐことが飯の種となっており、一切の躊躇いもなく人を殺害することで恐れられている。
こうした犯罪組織は大きく2つの組織があり、一つはBarrio 18(B18)。そしてそのもう一つが、「黒い未亡人」の背後にいるMara Salvatrucha(M-13)なのだ。
エルサルバドルではM-13が勢力を張っている。その数が凄まじい。なんと、人口650万人に満たない国でおよそ10万人がM-13に属しているというのである。そして彼らへの恐れからであろうが協賛者は100万人いると推測されている。
「黒い未亡人」犯罪の発覚は逃げ延びた女性の証言から
オリバレス検事が黒い未亡人事件の背景を詳しく説明できるのも、これまでの彼女の調査に加えて、今回初めて黒い未亡人に仕立てられそうになったが国外に脱出できた一人の女性(仮名モニカ)が、今回の公判で証人となることを約束して彼女の口からも詳細が証言されたからである。(参照:「
Elsalvador.com」)
公判にあたり、検察はモニカの居場所を突き止め、彼女が公判でビデオリンク方式を利用して証言することを誓ったのであった。
公判の結果、主犯格は懲役30年、他にも25年、15年が判決として下されたのである。
今回の裁判は黒い未亡人事件として初めての公判であったが、オリバレス主任検事によると、これまで黒い未亡人にさせられた女性は想像されている以上の数に上るはずだと指摘している。その詳細が掴み難いのは彼女たちもその後証拠を消すためにM-13のメンバーによって殺害されるケースもあるからだという。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身