「証拠あんのかよ」
浮気を疑われ、30代の夫は、開き直った。
子どもができるまでは、優しい夫だった。仕事が終わると、真っすぐ帰宅し、夫婦仲はよかった。週末は、一緒に買い物に出かけ、掃除や洗濯も手伝ってくれた。
それが、子どもができてから変わった。残業や休日出勤が多くなり、時折、地方出張もある。
取引先の接待も増えてきた。接待中は、自宅への電話もできないという…………
モラハラ、セクハラ、痴漢、風俗その他の性加害は、同根だろう。女性を蔑視し、消費、所有の対象と考えるが故に、性加害に至ると考えられる。
さて、斉藤章佳氏の著書「男が痴漢になる理由」(イーストプレス)によると、痴漢常習者は、痴漢してもいい理由の一つとして、痴漢冤罪の存在を挙げるという。また、自分のしたことを悪いと思っていない。
斉藤氏の知見は、私の数少ない痴漢刑事弁護の経験とも一致する。日本では、7割程度の女性に痴漢被害、1割程度の男性に痴漢加害の経験があるとの調査も存在する。外国人女性の多くが、日本の最も残念な点として、痴漢問題を指摘する。カナダ政府は、日本への観光客に対し、痴漢に対する注意を喚起している。<参照:
カナダ政府>
日本居住歴が長い外国人男性も、痴漢に走るようになる
ところで、痴漢加害者の治療に携わっている斉藤氏や、刑事弁護を担当する弁護士の経験、知見からは、痴漢の原因は、性欲というよりも、女性を支配することにより得られる満足と考えられる。
また、日本在住が長くなると、一部の外国人男性は、電車で痴漢するようになる。私も、欧米出身者、アジア全域など、多様な出身国の外国人男性の痴漢弁護の経験がある。なぜ、日本で痴漢が多発するのか。それは、日本の社会的文化的規範に問題があるからではないか。痴漢経験のない外国人男性が日本で痴漢を覚えるのも、それが、日本の「文化」だからではないか。
以上、痴漢には、支配欲や認知の歪みがみられる。痴漢擁護者/応援団も、痴漢を被害者の問題(例えば、短いスカートが原因など)と捉えるなど認知が歪んでいる。
モラ夫にも支配欲、認知の歪みがみられる。モラ文化擁護者/応援団も、モラハラを被害妻の問題(例えば、妻が夫を尊重しない、立てないから夫が怒るなど)と捉えるなど認知が歪んでいる。つまり、モラハラと痴漢には通底するものがある。
より広く、DV、モラハラ、セクハラ、痴漢、不貞、風俗等性加害には、共通性があり、同根と考えられる。その根とは、男性を支配者、女性を従属者と捉えるモラ文化である。