ガソリンの不足で輸送手段の機能が大幅に後退し、生産工場への原材料の輸送が出来ない状態が続いている。しかも、不足している食料の輸送も更に困難になっている。特に、3つの州タチラ、ツゥーリア、メリダでは多くの機関の機能がストップしており、学校は休校、食料も配送できない状態になっているという。銀行も現金が不足している。(参照:「
El Nuevo Siglo」)
タチラ州のライディ・ゴメス州知事によると、同州の生産機能の60%がストップした状態で、牧畜産業は破産状態にあり、果物や野菜は配送できないということで傷みがひどくなっているという。
ツゥーリア州の首府マラカイボの住民カルラ・カドゥレミさんはガソリンを給油するのに列に並ぶ為に一日の仕事が出来なくなっているそうだ。同じく、デニス・カレロさんは「子供を学校に連れて行くのも緊急事態のようになってしまった。普段行っていたことが緊急を要した状態になり、外出するにもどのようにすれば良いのか分からない状態だ」と語った。更に彼は「ガソリンスタンドから離れたところで20リットルのガソリンを20ドルで売っている」といって批判した。彼が言うに「他の国だと当たり前のような価格だが、ベネズエラではガソリンの価格はこれまであってなきようなものだったからだ」とも指摘した。
メリダ州ではロス・アンデス大学の教師が登校できないということで休校になっているそうだ。そのひとり、カルロス・ラミレス講師はワッツアップでどこのガソリンスタンドで給油できるといったグループで情報を交換しているそうだが、タンクローリ車が到着するまで3-4日列に並んで待つのだそうだ。だから住民は買い物や子供を学校に連れて行くことなどができない。公共の交通機関も同様で機能していない」と語っている。(参照:「
France24」)
20年前まではベネズエラの石油公社は採油において世界から注目を集めていた。勿論、同石油公社はベネズエラ経済成長に最も貢献していた。日毎に120万バレルを製油していたのが、今では7-12万バレルという大幅に減産している。
現在の国内需要は20万バレルを少々下回る量だとされているが、それでも現行の製油量では需要に応えらない。このような状態が今後も続くことになると、6月中旬には国全体がパニック状態になると予測されている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身