「北朝鮮観光には前々から興味はありましたが、客商売なので、3日も4日も音信不通になることは無理で、連絡ができないダウンタイムは、せいぜい丸1日くらいなので日帰りツアーの再開を待っていました」(日帰りツアーへ問い合わせをした日本人男性・自営業)
新義州日帰りツアーはバスで中朝国境の鉄橋を渡っていく
現在、一般的な北朝鮮ツアーへ参加すると最低2泊3日以上となる。これは北朝鮮側の出国手続きの関係で最低でも3日間の滞在が必要となるためだ。その例外が、新義州であり、以前お伝えした羅先特別市となる。羅先は、日帰りはできないが、PDFファイルをプリントアウトすればそのまま査証(ビザ)となる簡易査証制度を導入しているので1泊2日の短期旅行ができる。それ以外の首都平壌を含む地域は、2泊3日以上の日数が必要となっている。
前出の男性のように客商売やいつ緊急連絡が入ってくるか分からないような業種の人たちには、携帯電話が圏外になったり、インターネットがつながらない場所へ長時間身を置くのは難しいという声も聞かれる。そういう人たちにとって日帰り北朝鮮旅行は例え高くても魅力的なのだ。
それがたったの3週間で再び門を閉じてしまった。その理由を確認すると、再開後に訪れた「1号」日本人が新義州で問題を起こしたからと回答があったという。
開放撤回の理由は第一号の日本人が問題を起こしたから?
しかし、それは怪しい。なぜなら、新義州自体は日本人も観光しており、先に平壌へ入って、帰路に平壌から「朝鮮国際旅行社(KITC)」のガイド同行で新義州へ立ち寄って観光するというルートであれば新義州を訪れることはできるからだ。だから、「第一号観光客が問題を起こした」というのは考えづらい。推測だが、 新義州妙香山国際旅行社が日本人の対応に不慣れだったり、日本語や英語などの外国語通訳の確保ができないなどの要因なのではなかろうか。
さらに丹東の北朝鮮旅行の手配代理店によると、北朝鮮国内には外国人を担当する旅行会社が増えて競争が熾烈を極めているようで、旅行会社同士の利権争いや足の引っ張り合いなどが原因なのではないかと明かしてくれた。
そもそも今回、中国人以外の外国人受け入れを再開したのは、旅行単価を上げることが目的と考えられる。
現状、中国人向けの日帰りツアーは500元(約8000円)ほどで、1泊しても800元(約12800円)もしない。それが日本人であれば、同じようなホテル、食事、観光地で、中国人の5倍近くも稼ぐことができてしまう。外貨を少しでも稼ぎたい北朝鮮にとっては現実的な選択肢と言えるわけだ。
冷静に考えると、北朝鮮人にも予想ができない行動をすると言わしめる中国人旅行客の対応で日々鍛えられているなら日本人客の対応なんてラクラクだと思う。今回の本当の停止理由は定かではないが、日本人にとって北朝鮮日帰りツアーへの壁はまだまだ高そうだ。
<取材・文/中野鷹(TwitterID=
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