子どもが集めたものを勝手に捨てる、お年玉を取り上げる……厚労省が認めない「経済的虐待」の実態

高校生のアルバイト代を父親がパチンコに使ってしまうケースも

 高校生にもなれば、アルバイトで収入を得ることもできる。スマートフォンアンケートアプリ「TesTee」を運営するテスティー(東京都中央区)は2017年3月6日~7日、TesTeeユーザーの中学生および高校生446人を対象に「中高生のお小遣い事情」を調査した(リセマム2017年3月14日付より)。  その調査結果によると、お小遣いをもらっていたのは中高生の53.1%で、そのおよそ3割はお小遣いを「貯金」していた。高校生を対象にしたアルバイトに関する調査では、「現在アルバイトをしている」のは19.2%で、アルバイトによる月の収入は「20,000円未満」が34.5%、「20,000~30,000円未満」が31.0%だった。  こうしたおこづかいやアルバイト代を辛抱強くこつこつ貯めて、やっとの思いで念願の商品を買っても、不在時に親に壊されたり、大事なお金を親が勝手に使ってしまうことは、珍しいことではない。  親戚からもらったお年玉を、親に「預かっておく」と言われて渡したら、後年「そんな話はしていない」とか、「生活費に使ったからいいでしょ」と言われて失ったケースは珍しくない。 「半年働いたバイト代を自分の部屋の貯金箱に入れておいたら、知らない間に父親に貯金箱を壊され、全額パチンコ代に使われてしまった」という女子高生から、筆者は相談メールをもらったことがある。その子の悲しみを思うと、大人として無力感を覚える。経済的虐待の実例については、筆者が東洋経済オンラインに書いた「子どものカネを収奪する『経済的虐待』の真実」も読んでみてほしい。  大人が「陳腐」「幼い」「勉強のジャマ」「安物」と思い込んでいる品物でも、その子どもにとっては自分の進路に希望を感じさせるアイテムだったり、親や教師などの大人にわかってもらない気持ちをわかってくれる作品だったり、日々の勉強や人間関係に追いつめられてすさんでしまった気持ちを癒し、ほぐしてくれる玩具かもしれない。  子どもが大事にしているものは、どんなに安い値段のものであろうと、収入源が乏しい子にとっては大富豪でも買えない高価な貴重品であり、絶対無比の希少品だ。  だから、大人の視線で一方的に価値を判断したり、市場価値だけで比べたりするのは言語道断だし、本人から大事にしている理由も聞かずに処分してしまえば、子どもの自尊心を想定以上に深く傷つけるおそれがある。  何を買っても親に壊されたり、何十時間も働いて得たお金を親に奪われるなら、労働意欲や勉強意欲を失ったり、「何をどうがんばってもどうせ無理だ」という学習性無力感にとらわれて、不登校やひきこもり、希死念慮(自殺願望)に導いてしまうこともあるのだ。

民法では親権者が「子の財産を管理」と規定

 では、なぜこのような横暴が、親に許されているのか?  民法の第824条に、こう書かれているからだ。 ”第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。”  この法律は、「子どもに資産がない」時代を前提にしている。そのため、改正の余地が高まるばかりだ。高校生でもアルバイトができて、いざとなれば生活費さえ稼げる今日、その賃金を根こそぎ親に奪われることをよしとする根拠法が残っていては、いくら雇用主が子どもに賃金を直接渡しても、親権者に財産管理を口実に搾取されてしまいかねない。  子ども虐待に経済的虐待が認められない限り、身体的虐待や性的虐待など他の虐待を受けている中高生は、自力で親の元から避難するための交通費などの資金を得にくくなる。そうなれば、家を飛び出す勇気を持てないまま、親からいつまでも虐待され続ける恐れが高まる。あるいは、売春や麻薬密売などの違法行為で避難のための資金を作らざるを得なくなる。  中高生は、銀行口座を開設したくても、親権者との同伴や許可が求められる。今日の中高生は、親に見つからない口座で自分の貯金を守る権利すら奪われているのだ。せめて厚労省には、経済的虐待を子ども虐待でも認める措置を速やかに検討していただきたい。 <文/今一生> フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。blog:今一生のブログ
フリーライター&書籍編集者。 1997年、『日本一醜い親への手紙』3部作をCreate Media名義で企画・編集し、「アダルトチルドレン」ブームを牽引。1999年、被虐待児童とDV妻が経済的かつ合法的に自立できる本『完全家出マニュアル』を発表。そこで造語した「プチ家出」は流行語に。 その後、社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネスの取材を続け、2007年に東京大学で自主ゼミの講師に招かれる。2011年3月11日以後は、日本財団など全国各地でソーシャルデザインに関する講演を精力的に行う。 著書に、『よのなかを変える技術14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)など多数。最新刊は、『日本一醜い親への手紙そんな親なら捨てちゃえば?』(dZERO)。
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