また、ハラスメントだと感じている外国人に対して、当事者がよく口にするのが、「こっちは褒めているつもりなのに」というフレーズだ。
「関係性にもよりますが、欧米では基本的に相手の容姿について触れるのはNGです。久しぶりに会った日本人の知り合いに『ずいぶん痩せたね』と言われて、スゴく嫌な気分になりました。やんわり注意すると、『カッコよくなったから、褒めただけなのに』と、あまり理解していない様子でしたが……。そもそも太っているか、痩せているかなんて主観でしかないし、他人に言われる筋合いはありません」(アメリカ人・38歳・男性)
体型だけでなく、髪色や髪型、肌や目の色など、見た目に関する会話は基本的に避けたほうがいい。
「日本ではポジティブな触れ方をすればいいと思っている人が多いので、そもそも触れないでほしいと伝えても、なかなか理解してもらえなくて困ります。『こっちは褒めてるのに、なんで怒られなきゃいけないんだ』という態度を取る人もいる。でも、何か特別な事情があったり、本人がコンプレックスに感じていることだってありうる。相手からその話を振ってくるか、よほど親密じゃないか限りは嫌がる人が多いと理解してほしいです」(フィンランド人・28歳・女性)
かくいう筆者も一度、知り合いが痩せたことを指摘してしまい、「なんでそういうことを言うの?」と注意されたことがある。その際、脳裏に浮かんだのはやはり「褒めたつもりなのに」という言葉。しかし、これをキッカケに今ではそもそも触れること自体がよくないのだと気をつけるようにしている。文化の違いはあれど、相手が嫌がる行為であるのならば、それを無理に続ける必要はないはずだ。
「外国にはいろんなルーツの人がいて、見た目と直結しているケースも少なくない。自分は単に表面上の話をしているつもりでも、人種やセクシュアリティなど、相手の中身に深く触れてしまうかもしれません」(アメリカ人・男性・43歳)
どうせ通じないから、外国人相手だからと無礼講のつもりでセクハラ発言をしたり、褒めているつもりでも見た目に触れることには、くれぐれも注意したい。
また、周りでそういった行為を見かけたら、相手が不快に思っていないか確認したり、周囲に注意してあげることも大切だ。
多くの外国人が憧れをもって訪れている日本。不用意な行為で、そのイメージに泥を塗らないよう気をつけたい。
<取材・文/林 泰人>