子どもができると、親の生活リズムはガラッと変わる。仕事の制約や趣味の時間が持てないといったマイナス面が取りざたされがちだが、子を持つことで生じる変化には楽しさもある。
ひとりで歩けばあっという間に過ぎてしまう駅までの道は、息子の手を引いて歩くと何倍もの時間がかかる。大人にとっては何でもない物や光景が、息子には面白くてたまらない世界だからだ。道を行き交う車を見て「おー!」と歓声をあげ、民家の塀や道端に咲く花に触れたりする。息子は今目の前にあることが楽しくて仕方がない。
池のある公園に行けば、水辺に集まる鳥を見てはしゃぐ。園内に落ちている松ぼっくりやどんぐりを拾って不思議そうに見つめたり、小石で土に線を書いたりして喜んでいる。時には枝を筆者に渡して、「ニャンニャ」と言いながら猫の絵を書けとせがんでくる。
息子を見ていると、「今を楽しむって大切だな」と普段の行動を見つめるきっかけになる。過去のことを悔やみ、未来を心配するのではなく、今を楽しむ。息子の姿から、何気ない日常にはたくさんのワクワクがあると感じるし、子ども時代に戻ったかのような気分にもなる。
現在の筆者の日課は、息子とともに車のおもちゃで遊ぶこと。自分も小さいころ、乗り物のおもちゃが大好きでひとり遊びをしたものだった。今は息子と2人で床に寝そべって、「ブーン、ブーン」「バスが到着します」などと言いながらおもちゃを走らせる。心落ち着く時間だ。
また子どもを通じて、夫婦の絆が深まったと感じる。
夫婦が協力して育児をすると、精神的にも肉体的にも負担は半減する。「子育て担当は自分しかいない」と神経を張り詰めていればいつか疲れてしまうが、「家に交代要員がいる」「頼りになるパートナーがいる」と思えたら、心にゆとりが生まれる。その分、優しい気持ちで子どもやパートナーに接することができる。
夫婦の仕事内容や家計の状態、子どもの体質や性格など、家庭ごとに何からしらの「育児の悩み」はあるものだ。その悩みを夫婦で共有し、協力して乗り越えていくことは、子育ての楽しさのひとつだと筆者は思う。
育児ではネガティブな面が注目されやすいが、子どもがいるからこそ見える景色や味わえる感情があることも事実だ。子育てでは、優しい気持ちになるときもあれば、イライラして少しだけ子どもと距離を置きたいと思うときもある。「愛しさ」と「ちょっと好きになれない」気持ちの間を行ったり来たりする。そんな感情の動きも、長い目で見れば子育ての楽しい思い出になると思うのだ。
息子が2歳、3歳と大きくなるにつれて、さまざまな成長の場面に立ち会えるのだろう。これからも息子に向き合い、たくさんの愛情を注ぎ、見守っていこう。
<文・薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。