「天ぷらスガキヤ」の1号店が出店したのは、名古屋市中区大須万松寺通り。万松寺通り商店街は日本有数の賑わう商店街・大須商店街の一角を担うエリアで、まさに「名古屋の中心」とも言える場所への出店だ。なお、徒歩数分の場所には先述の「一得庵」も出店している。アーケードに入り、スーパーマーケット「生鮮食品館サノヤ」の緑の看板を目印に行けば「天ぷらスガキヤ」はその隣だ。
大須・万松寺商店街
店舗の外装はいかにもスガキヤらしい赤色で、真新しい「天ぷらスガキヤ」の看板に加えて、見慣れた「Sugakiya」のロゴも並べられている。
店内に入ると、一般的な対面カウンターのスガキヤ店舗と異なり「セルフうどん店」を彷彿とさせるカウンターが現れる。
セルフうどん店を彷彿させる店内
店内は比較的混雑しており、早くも固定客がいるようであった。
入口付近に設置されたタッチパネルで注文を行い、機械から発券された食券を店員に渡すと、店員が専用の機械で天ぷらの調理を始める。調理工程は機械により自動化されており、ベルトコンベアーに乗った天ぷらを眺めているうちに僅か2~3分程度でスムーズに提供される。
注文はタッチパネル式だ
また、「ごはん」盛り付けるセルフサービス方式で、大盛りから小盛りまで自由自在。こうしたシステムは先述の「一得庵」とは大きく異なり、店内に掲示された案内に従ってオリジナルの天丼をつくることもできる。
ごはん、味噌汁もセルフサービス。これが「安さ」の秘密だろう
同店のもう1つの特徴として挙げられるのが、スガキヤの単独店舗では珍しくクレジットカードや交通系電子マネーなどのキャッシュレス払いにも対応しているということ。実際に店内では名鉄などで使えるICカード「マナカ」を使う客の姿も見られた。
こうした機械化や、セルフサービス方式、キャッシュレスの導入による効率化は価格にも大きく影響しているとみられ、天ぷら1個が80円(+税)から、ベーシックな「とり天ぷらセット」でも390円(+税)と、天ぷら専門店としては激安。「一得庵」の同等商品と比べると2~3割程度の価格に抑えられている。「本当にこの値段でやっていけるのか?」との不安もよぎるが、実は「天ぷらスガキヤ」では生ビールやハイボールなどといったアルコール商品も提供されている。そのため、天ぷらを肴に一杯を楽しむこともでき、「ちょい呑み需要」にも対応しているのが特徴だ。
なお、こうした「ちょい飲み」需要が客単価の引き上げに貢献していると思われるものの、なかには梅酒のロックなど93円(+税)で提供されている激安サービス品もあるため、くれぐれも飲みすぎには注意しよう。
とり天ぷらセットはこのボリュームで390円+税
もちろん、先述した通り安さのみではなくセルフサービス店ならではの「提供の速さ」も特徴で、それゆえ天ぷらは「揚げたてサクサク」の美味しさ。まさに「ラーメン店のファストフード店化」で成功したスガキヤならではの「天ぷらのファストフード店」と呼ぶに相応しい店舗といえる。
同じメニューをセルフサービスで「天丼」へと作り替えることも可能だ。美味しく戴きました
早くも地元の人気店となりつつある”ファスト天ぷら業態”「天ぷらスガキヤ」。しかし、取材直後に悲しいニュースが飛び込んできた。この店舗は5月19日を以て一旦閉店してしまうという。
だが安心して欲しい。この店舗は、
6月下旬ごろに天ぷら・天丼に加えてそばも提供するというスガキヤグループの新業態店舗「はね天」として生まれ変わるため、改装後も再び「スガキヤの天ぷら」を味わうことができるという。
かつてラーメン店「スガキヤ」の全国展開で挫折した経験もある同社だけに、このまま勢いに乗せて、再び「全国展開」とすることができるかどうか――地元でも「スガキヤの天ぷら」を食べられるよう、ぜひ全国展開お願いします!
マスコットキャラクター「スーちゃん」も天ぷらに。果たして再び「スガキヤ」の看板が全国へと羽ばたくことが出来るだろうか
<取材・文・撮影/淡川雄太(都市商業研究所)>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
@toshouken」