当然のことながら、メディアは撤去すれば交通事故は増えると懸念を表明。また、ブラジリア市の裁判所も先月それを撤去しないように要請したばかりであった。
最近5年間でリオデジャネイロとサントス間(SP-55)に74台のレーダーを設置して事故死は78人、一方同じく交通量の激しいパウリスタ地域のレジ(BR-116)ではレーダーは僅か14台に対し事故死は113人となっている。(参照:「
Taringa」)
しかし、政府はボルソナロ大統領の意向に従うかのように、インフラ省タルシシオ・デ・フレイタス相は前政権中に発注していた8000台の自動速度取締機を設置しないことを決定したという。その上、現行の契約も切れれば更新はしない方針だという。(参照:「
El Confidencial」)
スペインの交通安全局がブラジルの交通事情について今年3月25日付にて報じている。それによると、2015年度のブラジルにおける交通事件数は同国GDPの2.8%に相当する費用が発生していると言及している。即ち、事故に伴う諸費用として医療費、入院費、医薬品、看護費、そして死亡した場合にもそれに関連した費用が発生する。これらの全ての費用はブラジル人の一人当たり2015年度だと255.69ドル(2万8000円)の費用を負担したことになると報じている。(参照:「
Revista Trafico y Seguidad Vial」)
2014年のブラジル・ワールドカップの年の3月3日付の『
El País』がブラジルの交通事情について参考になる記事を掲載している。それによると、人口1100万人のサンパウロでは毎日750万台の車が路面で移動しているという。そこでは日毎に交通渋滞で3-4時間は移動できない状態にあるという。この問題を解消する為に中堅企業10社が集まって1500人の従業員に対し勤務時間に柔軟性をも持たせることを提案。或いは、自宅で仕事をすることも認め、また公共の交通機関の利用や会社が契約した車に従業員数人が一緒に乗車して出勤退社する、また自転車での通勤も勧めたという。交通渋滞を避けるためである。
ボルソナロが公言した自動制限取締機が全て撤去された時点で果たして事故の発生を減らすことができるのか誰もが疑問に感じているはずある。
<文/白石和幸 photo by Jonathan Alvarez C via Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身