連載第1回目に、筆者はアベノミクスの第3の誤りとして、「この6年間、がんばって『大胆な金融政策』を継続してきたことのツケがたまってきたこと。これは政府の過失であるとともに、国民の誤算ともいえます」と書きました。
「大胆な金融政策」を実施しても物価が期待通りに上がらないこと、そして、物価を上げるだけの政策に大した意味がないこと。これらの問題点はアベノミクス実施前から分かっていたことです。ただ6年間を棒に振ったというだけなら、まだ諦めもつきます。ちょっと長いですが。しかしその間には、できないことを無理にやろうとした歪みが生まれています。そして、「タダでできる政策はないのだ」ということにも、気に掛かけてほしいのです。
つまりは、
行政と財政の問題です。
行政の問題はあまり問題にされにくいですが、無為な政策に職員の方々を奔走させるのはやはりムダです。
アベノミクスの第2の矢たる「機動的な財政政策」は、2013年に事業規模で約40兆円の経済対策を行い、その後も史上最大の予算規模を更新し続け、いまでは101兆円です。アベノミクス実施前と比べて23兆円も増大しています。財政政策の経済効果に関する内閣府の試算を積み上げていくとすでに相当程度の経済成長率が達成されていなければならないはずですが、試算通りに事が運んだことは全くない、といっても言い過ぎではないでしょう。そもそも、「機動的な財政政策」のためにトータルでいくら使ったのか、公式のまとめがないのも問題です。
財政の問題は様々なメディアで取り上げられています。 主な問題は、国の借金の額が、国の経済規模に対して大きすぎること、そして、毎年の税収が不足していて借金の返済に回せないことです。色々な理由をつけて「借金なんか返さなくてもいいんだ」と主張する声があることは理解しています。しかし、借金を返した方がよい、との見解に反対する人はいないでしょう。意見の一致をみないのは返さなかった場合のリスクの評価です。
私たち個人が借金を踏み倒した場合、返済を催促する電話がかかってきたり、怖い取り立て人がやってきたりするのではないでしょうか。そして、信用を失い、新たな借金をすることが難しくなります。
国は借金取りよりも強いから大丈夫、ということができるでしょうか。たぶん、無理でしょう。国はたしかに強そうに見えますし、実際、腕っ節は大したものです。しかし、借金をするためには、国債を買ってもらわなければなりません。いくら国が強くとも、国債を押し売りすることはできないでしょう。いまは国民が税金をきちんと納めてくれていますが、怒って「借金を踏み倒すような国には税金を支払いたくない」と言い出す可能性だってあります。財政は国民が支持してはじめて安定するのです。