タイ人に人気の「上野」。インバウンド獲得のための地道なPR戦略

TITF

競り市みたいなPRをするブースもあるなど、TITFはちょっとした祭りだ

タイ人の旅行先選定の決め手にもなるタイ最大の旅行フェア

 タイの日本観光人気は相変わらず衰えを知らず、日本の観光業界もタイ人誘致にかなり力を入れている。特にその舞台になるのが、タイ最大の旅行フェアとされる「Thai International Travel Fair(タイ国際旅行博)」(TITF)である。  TITFは「タイ旅行業協会」が主催する旅行博覧会で、毎年2回、2月と7月もしくは8月にタイの首都バンコクで開催される。参加企業は旅行代理店のほか、ホテル、航空会社、さらには小売業者まであり、毎回来場者だけでなく参加企業にとっても大きなイベントになる。自社商品や観光地を紹介するだけでなく、一般消費者に向けた旅行関連商品の即売会という側面も強いイベントで、来場するタイ人も旅行に行く期間と予算だけは決めているが、どこに行くかはここで決めるつもりで来場している人が多い。会場に来ているということは高確率でお金を落としてくれる客というのが明白なのもまた出展者のメリットになる。

タイ人に人気の上野にあるホテルも出展

 2019年の最初の開催は、バンコク中心地にある「クイーンシリキット・ナショナル・コンベンションセンター」の第24回TITFだった。ここには「日本旅行ブームに湧くタイ。もっとも人気なスポットは「上野」の何故?」で紹介した、東京・上野にあるタイ人に人気の宿「上野NEW伊豆ホテル」も初めて参加しており、密着取材をさせてもらった。現在も同ホテルはタイ人宿泊客が90%以上を占めるので、タイ人誘致は商売の要である。これまではタイ人の口コミに頼る受動的なビジネスだったが、今年は能動的にタイ人にPRしようと、自らタイに乗り込んできた。
「上野NEW伊豆ホテル」のブース

「上野NEW伊豆ホテル」のブース。タイ人の目に留まるように、SNSへの導線を手作り看板にした

 今回「上野NEW伊豆ホテル」の代表として来たのは創業者の孫にあたる河野明子さんだ。タイ人は会社員であっても自由に有休を取得するため、どのシーズンでも気ままに旅行する。ホテルも常にタイ人が多く忙しいが、その合間を縫ってバンコクに来た。今回はタイ人誘致が大きな目的ではあるが、経営者本人の目でタイの様子を確認し、それを誘致や運営計画に取り入れるつもりもあった。PRの手法はタイ語のチラシを配り、タイ人の利用者が多い「Facebook」のファンページを駆使して「上野NEW伊豆ホテル」の名前をさらに知ってもらうというわけだ。
ブース内側

ブース内側から見た様子。来場者の大半の目的が明白なのもTITFの特徴と魅力だ

「上野NEW伊豆ホテル」が立ったブースは実際には独自で借りたものではなく、交通やホテルを専門にインバウンド・プロモーションを行う「株式会社オーエイチ」のブースに間借りする形だ。同社の海外プロモーションを担当する杉山裕美さんが中心となり、数社で参加し、効率よくプロモーションを行った。
次のページ
紫色でおなじみのあのお店も
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会