「切り売りされる北海道」鈴木直道・北海道知事に届かなかった夕張市職員の警告

鈴木知事

”菅チルドレン”と呼ばれる鈴木直道・北海道知事(右)が夕張市長時代、中国系企業に市所有のホテルやスキー場を売却。10億円以上の転売益を供与したという疑惑が浮上

届かなかった夕張職員の声

「夕張市所有のホテルやスキー場の中国系企業への売却は『一帯が囲い込まれてチャイナタウン化する』というリスクがありました。市役所内で問題提起をしたのですが、当時の鈴木直道・夕張市長(現・北海道知事)が決めた売却方針が変わることはありませんでした」  こう振り返るのは、中国系企業「元大グループ」への市所有財産(ホテルやスキー場など)に関わった元・夕張市職員。  もちろん、「チャイナタウン化」自体が「悪」だという見方には異論が残る。財政状態が苦しい夕張市に取って、人口増は大きな課題であるし、中国資本だからといって日本人が雇用されないとは限らない。  しかし、5月2日の記事「鈴木知事に中国系企業への利益供与疑惑」で紹介した、市の観光4施設を約2億4000万円で元大グループに売却、その企業が2年後の今年3月末に香港系投資ファンドに転売して10億円以上儲けた際に何らかの利益供与があったのではないか?という“北海道版モリカケ事件”ともいわれる疑惑があるとなれば話は別だ。

北海道が、外資などを取り込んで経済振興をはかる“実験場”に!?

ニトリ会長

北海道知事選で鈴木氏の応援団長を勤めた似鳥昭雄・ニトリ会長(中央)

 外資や外国人富裕層の誘致に熱心な北海道財界人は他にもいる。例えば、2010年に中国人富裕層向けの別荘を千歳市泉沢向陽台の文京区に17棟建設・完売して話題になったニトリの子会社「ニトリパブリック」だ。  このニトリホールディングスを率いる似鳥昭雄会長こそ、北海道知事選で鈴木氏の応援団長を務めた北海道出身のカリスマ経営者。安倍首相への大口献金者としても有名な人物なのだ。横浜政経懇話会が2012年10月10日に東京・港区で開いた「すが義偉君を励ます会」では、同社は100万円分のパーティ券を購入していたという(参照:「しんぶん赤旗」)。そのため、道庁関係者は警戒心を募らせていた。 「鈴木氏は知事選で、道外からカネと人を引っ張ってくる『ほっかいどう応援団会議』を提案していました。今後、中国人向け別荘販売の実績があるニトリの似鳥会長が応援団会議メンバーに就任し、北海道を切り売りしていく拠点となる可能性があります。北海道が、外資などの道外マネーを取り込んで地域経済振興をはかる“実験場”と化していくのではないでしょうか」  もちろん、JR北海道の窮状など、先行きが不安視される北海道の財政・経済再生のためにはインバウンド需要などが注目を集めるのは至極当然ですべて否定できるものではないが、鈴木知事の基本的立場は、「公共財売却など、とにかく民間企業に委ねるのが効率的で好ましい」という新自由主義的路線であり、似鳥会長とともに、外資への北海道切り売りに邁進することは十分に考えられる、と自民党支持層も知っておく必要はあるだろう。
次のページ
国会で疑惑追及の可能性も
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会