中国系航空会社からのオファーは、選考委員に知らされていなかった
施設売却を担当した夕張市産業振興課の古村賢一課長に中国系航空会社について聞くと、
4月5日の時点では「記憶がない」と答えたが、
情報公開請求で一部が公開された4月22日になると、こう答えた。
「元大グループが選考された(優先交渉権を与えられた)第八回夕張市特定財産売却選考委員会(2017年1月10日)の2日後、中国系航空会社の意向を仲介業者から伝えられたが、選考後なのでお断りした」
元大グループに優先交渉権を与えるのが適切と判断した「
夕張市特定財産売却選考委員会」(座長は河本光弘・札幌国際大学観光学部国際観光学科教授=北海道観光振興審議会委員)の委員は9名。そのうちの複数の委員は
「2017年当時は、中国系航空会社と夕張市が接触していたことはまったく知らなかった。委員同士の雑談で話題になることもなかった」と夕張市からの情報提供がなかったことを認めた。
「元大グループに優先交渉権を与えることに賛成はしたものの、本音では反対したかった」と話すある委員は、夕張市への疑問を露わにした。
「
夕張市はなぜ中国系航空会社の意向を伝えてくれなかったのか。議事録にある通り、反対が過半数の5名だったのに、雇用喪失を恐れる事務局(市の担当課長)の強力な議事進行で反対が減って、最終的に元大グループに優先交渉権を与える委員が過半数を超えました。
元大グループは『100億円を投資する』『香港の企業を連れてくる』などと言っていましたが、具体的な投資計画も企業名も示されていなかった。
過去に長野県の観光施設を2年程度で転売していることも明らかになり、5年間の転売禁止条項を入れることにも反対したことから疑問を感じていました。
しかし、市最大の雇用の場が失われるというリスクを突きつけられて、やむなく妥協しました。
中国系航空会社のことを知らされていたら『元大グループと比較検討し、両社を競合させよう』と緊急提案するなど、まったく違う展開になっていた可能性は十分にあるでしょう」
転売先の香港系投資ファンドについて、夕張市はほとんど情報を持っていない
売却されたホテル「マウントレースイ」
さらに、夕張市の担当者(事務局)は「雇用喪失」を恐れて元大グループへの売却を正当化したと説明しているのに、
転売先の香港系投資ファンドから新たな経営方針についてヒアリングもしていない。
今年3月末の転売から1か月が経っても「連絡待ちの状態」(古村課長)で、
新会社名も転売額も経営方針も把握していないという驚くべき状況だ。
しかも古村課長は4月末で早期退職。誰がこの業務を引き継いで、いつ新会社経営陣と面談するのかという日程も決まっていない。鈴木市政2期8年を引継いだ夕張市もまた、職務怠慢としか思えない対応を続けているのだ。