中西氏の記者会見では様々な恫喝的言辞が現れ、要は恫喝型ヒノマルゲンパツPAの典型なのですが、要は次の三つといえます。
・全く売れない原子炉を国内で売らせろ!
・国はカネを出せ、役人への見返りは出す!
・自分たちの電力代は下げろ!
その為に中西氏が会見中に自白したとおりに経産省・エネ庁と共同して作ったのが今回の経団連によるヒノマルゲンパツPA=4/8中西会見といえます。
現実には、現時点で稼働の見込みのない原子力発電所に6兆円*、再稼働9基にはテロ対策完了までに2〜3兆円の合わせて8〜9兆円の資金投入を行っており、それらはサンクコスト(埋没費用)になる危機にあります。更に完全に失敗して市場から追放された海外売り込みで1兆円近いお金を浪費しており、合わせて10兆円(核燃料サイクルでの浪費や福島核災害関連、廃炉関連は含めず)程度を過去8年間で原子力へ民間から投入し、それらが無駄になる高い可能性があります。無駄にならずとも投資効率は極めて低いものとなっています。
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“未稼働原発に5年で5兆円超支出 費用は主に電気料金:朝日新聞2018/3/8”、
“3月8日付 朝日新聞「未稼働原発に5年で5兆円」について - 関連報道に関する当会の見解 | 電気事業連合会2018/3/8” >
エネルギーベストミックス論は、第二次石油危機後に現れたヒノマルゲンパツPAにおける中心的教義(ドグマ)ですが、
「原子力は規制の上に成り立つ」という大前提を忘れており、かつての蒸気発生器ピンホール(PWR)、シュラウド亀裂(BWR)、制御棒落下事故隠しスキャンダル(BWR)、福島核災害(全炉型・とくにBWR)、司法リスクの顕在化(全炉型)、規制リスクの顕在化(全炉型)*といった原子炉規制に関わる全炉長期停止、稼働率低迷を考えに入れてきませんでした。結果は、蒸気発生器やシュラウドの問題はあくまで技術上の問題で解決できた事ですが、それ以外は日本人が原子力をまともに使いこなせないという事実の露呈とそれによる重度の供給不安定という結果に至り、繰り返してきています。
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“テロ対策施設、未完成なら原発停止 再稼働原発の停止も:朝日新聞”2019/4/24>
海外市場で全く通用しなかった日本の原子力産業ですが、国内においてもまともに使いこなせず、偽計によって使いこなすふりをした結果が福島核災害とその後の再稼働不能であって、そこへ恫喝型ヒノマルゲンパツPAを持ち込み、エネ庁、経産と結託して中央突破を図る、それが中西会見であると断ずるほかありません。
ここまでわずか8年間に原子力一点買いで無駄にしてきた8〜10兆円と、人的資源を堅実な設備投資に回していれば、今回の経団連提言なるものは全く必要がありませんでした。
いわば、ヘタッピ競馬狂いのオヤジが大穴狙いの一点集中でスッカラカンになるまで競馬でスッて、孫の貯金までを奪おうとしているのが中西氏の会見と言いましょう。
原子力発電所の再稼働が福島核災害後9年目であるにもかかわらず9基に過ぎないことを嘆いている。しかし、「原子力は規制の上に成り立つ」という大原則から、これは容易に推測できたことで、その程度の能力がないのか、規制をねじ曲げる魂胆であったかの吐露に過ぎない。(中西氏記者会見 概要資料より)
すべてにおいて夜郎自大と統計・基礎数値の捏造による空間失調(バーティゴ)に陥っていることの吐露である。(中西氏記者会見 概要資料より)
本稿、次回は、中西氏記者会見の質疑応答について全文文字おこしと解説を行います。
『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』第4シリーズPA編Ⅲ原子力産業・圧力団体による宣伝・政策活動−−3
<取材・文・撮影/牧田寛 Twitter ID:
@BB45_Colorado photo by
Nuclear Regulatory Commission via flickr (CC BY 2.0)>
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についての
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