統一地方選で幸福実現党(幸福の科学)はなぜ19人も当選したのか?

2012年・大川隆法

2012年衆院選時の大川隆法氏

幸福実現党、「大躍進」?

 4月21日に投票が行われた統一地方選後半戦で、幸福実現党は全員落選だった前半戦と打って変わって18人が当選。すでに無投票で当選を決めた1人と合わせて、計19人が当選した。統一地方選前の地方議会議員が全国22人から35人へと増えた。  一見「大躍進」のように見える。しかし実際には、競争が厳しくない小規模自治体の選挙で下位当選しているケースが多い。  時事通信によると、町村長選で4割、政令市以外の市長選で4割、道府県議選と町村議選でそれぞれ2割が無投当選となっており、市町村長や地方議員の「成り手不足」が深刻化している。無投票ではなかった選挙でも、地方選挙が幸福実現党に有利な状況になっているのではないか。改めて、幸福実現党の選挙結果を分析したい。

前代未聞の宗教政党

 まずは、幸福実現党とは何なのかを、おさらいしておこう。  同党は、2009年の都議選を前に唐突に結成された。よく「幸福の科学を支持母体とする政治団体」といったたぐいの表現もされるが、厳密には「幸福の科学の政治部門」と呼ぶのがふさわしい。  宗教法人幸福の科学は、学校法人運営など様々な活動や宗教法人以外の組織をまとめて「幸福の科学グループ」と称している。幸福実現党もここに含まれており、党本部は東京・赤坂にある宗教法人幸福の科学の「ユートピア活動推進館」内にある。党首は釈量子氏だが、教祖・大川隆法総裁が党総裁も務める。  政策も、全てではないが、大川総裁が様々な霊を呼び出して喋らせたと称して発表する「霊言」に基づいている。同党ウェブサイトの「発刊書籍」のページには、「日銀総裁 黒田東彦」やら「商鞅・韓非・毛沢東・林彪」やら、さまざまな人物の「霊言」が掲載されている。  教義や霊言を信じる政党なので、当然、宇宙人やUFOの存在を信じる幸福の科学の教義も反映している。2012年衆院選に向けて発表された政策集では、「外交・防衛」の章に「防衛・宇宙技術の可能性を追求するため、UFO や宇宙人の調査・研究を進めます」と書かれていた。2017年衆院選向けの政策集では、「宇宙人」「UFO」などのワクワクする単語は消えたものの、「自衛隊の宇宙対応能力の強化」「宇宙ステーションの打ち上げ、次世代ロケット、宇宙船の開発および宇宙エレベーターの開発」「月と火星の都市建設を日本の国家目標とします」などと書かれている。  宗教法人幸福の科学は、信者に対して政党活動のための植福(布施)の呼びかけを行う。一方で、幸福実現党も幸福の科学信者に対して宗教的な祈願や研修を行う。写真にあるのが、そのチラシと、願い事や参加料金を入れて提出する「奉納袋」だ。
祈願封筒

祈願封筒

 参加料金は祈願や研修事に1万円や3万円などさまざま。しかし金額を「奉納目安」と表記し、実際に入れる金額は本人の意思によるという体裁と表示することで、政党なのに「植福(布施)」を集めているのだ。実際にはこれが政治資金にあてられるので政治資金パーティーなのだが、政治資金収支報告書には政治資金パーティーとして報告せず「法輪輾転・祭政一致研修」として記載。2017年(平成29年)分報告書では、この研修で約12億8000万円もの収入を得ている。党費収入は約4億円で、その他寄附や同党の都道府県本部から送られてくる金などをあわせ、年間収入総額は約22億1000万円にのぼる(前年からの繰越金除く)。  自民党本部の同年の収入総額が約25億9000万円だ(前年からの繰越金除く)。幸福実現党は国会議員が1人もいないにもかかわらず、政権与党である自民党本部と同程度の収入を得ている。  もともと宗教法人幸福の科学からの借入金で活動費を補ってきたが、2014年に借入総額が111億円に膨れ上がった。この年の「祭政一致研修」による収入は、たったの約1900万円。それ以前でも年間1~2億円だ。逆に同年だけで幸福の科学から8億円を新たに借り入れており、事実上、宗教法人のカネで運営される政党だった。  しかし2015年、宗教法人からの借り入れをやめ、借入金の返済を始める。「祭政一致研修」を「法輪輾転・祭政一致研修」と改称し、約21億8000万円もの収入を得て、約20億9000万円を宗教法人に返済した(年間収入は約24億9000万円)。2016年も同研修で約21億8000万円を得て、20億9000万円を宗教法人に返済(年間収入は約28億7000万円)。収入の7~8割が宗教法人に還流されている。  2017年は返済額が9億9000万円へと半減したが、基本構造は変わらない。政策(教義)面だけではなくカネの面でも完全な「宗教政党」。いや、「幸福実現党という名の宗教団体」と言っても過言ではない。なにせ、宗教法人に献金している信者たちから、別途、政党自身が宗教行為によってカネを吸い上げているのだから。  結党当初は「政教分離原則」に違反するのではないかと指摘する声もあったが、日本国憲法は国が特定の宗教を優遇したり宗教が政治権力を行使したりすることを禁じているだけで、宗教団体が政治活動を行うこと自体は禁止していない。同党が一定の議席を得て政治権力を行使する段階になれば話は変わるかもしれないが、幸いにも国政選挙で全敗し続けているため問題にならない。
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「幸福実現党」とは何なのか?
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