岡部:ところで、世界的にその国の住民と外国から来た移住者の協力が進まないのは、なぜだと思いますか?
―― そうですね……。他人事だからですか?
岡部:残念ながら的外れです。答えは
言語です。日本人と外国人は言語の壁で隔てられているから協力が進まないのです。お互いに言葉が分からないから助けを求めることも、手を差し伸べることもできないのです。
差別とか偏見とか、もうそういうのはいいんですよ。確かに一部にはそういう人もいるかもしれませんが、
良心的な日本人は大勢います。だから、親切な日本人と困っている外国人が言語の壁を乗り越えて連携する仕組みがあればいい。
私が構想している総合情報プラットフォーム「スマイル」には翻訳機能をつけた上で、SOSに対応するセーフティネットの役割も果たしてほしいと思っています。
確かに実習生を管轄している「外国人技能実習機構」(OTIT)にも、外国語で対応してくれる緊急ホットラインが用意されていますが、
対応時間は月水金の11~19時だけです。緊急ホットメールもありますが、24時間対応してくれるわけではない。実際、私は先ほどの北海道の件で入管やOTITに連絡を入れましたが、何も対応してくれませんでした。行政に頼るよりも、心ある人同士が協力する方が、問題解決の早道だと信じています。
―― 「スマイル」は情報格差を解消して、日本に来たベトナムの青年たちが自分で自分の身を守り、日本人を含む誰かに頼ることができる手段になる。
岡部:その通りです。「スマイル」は渡航前、滞在中、帰国後ごとに必要なあらゆる情報を提供します。たとえば、そこで事前に悪徳ブローカーやブラック企業の情報を知ることができれば、多額の借金を背負ったり、実習先から失踪する状況を避けることができる。
みんなで情報を共有すれば、自ずと現地のブローカーや日本の受け入れ企業の体質も変わっていくはずです。だから、私は日本で傷ついた子たちに「後輩に同じ思いをさせたくないなら、自分の手でその情報を伝えるんだ。そのための場所は自分が作る」と話しています。
私はこの問題で自分の無力を嫌というほど思い知らされました。どれだけ個別に相談に乗っても、相談者はどんどん生まれてくる。監理団体に勤めても、目の届く範囲の子たちしか守れない。だから、私も他人に助けを求めます。いまの私の信条は「他力本願」です。「スマイル」が様々な人をつなぎ合わせ、この問題を解決する一助になることを心から願っています。
(4月5日インタビュー、聞き手・構成 杉原悠人)
提供元/月刊日本編集部
げっかんにっぽん●「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
おかべぶんご●「福島外国人実習生・留学生支援ネットワーク」代表。ベトナム・ホーチミン出身で、本名はファム・ニャット・ブン。8歳で難民として来日し、福島県郡山市出身の日本人女性と結婚した。市内でベトナム料理店を経営していた2017年、実習生が低賃金や雇用主からの暴力に苦しむ姿を目の当たりにし、力になりたいと支援ネットワークを設立