イクメンでも、妻子を迫害するモラ夫たちもいる<モラ夫バスター8>

口だけ出して子育てをしているつもりの「育児指令型」

 育児指令の場合、例えば、「おい、お尻臭いぞ!」、「なんで泣いているんだ、そうか、ミルク欲しいんだな、おいミルク」と妻に指令する育児である。  法廷で、「私も、育児を分担していました」と堂々と述べるので、その内容を尋ねると、結局、育児指令だけのこともある。「なぜ、(お尻が臭いと)気付いたあなたがオムツを取り替えないんですか」と尋ねると、自称「イクメン」は、不思議そうな顔をする。育児指令でも十分に育児を担当していると考えているらしいのだ。認知が歪んでいると言うべきだろう。  公園に連れて行っても、子どもを遊ばせ、自分はベンチでタバコを吸ったり、スマホをいじったりするだけのモラ夫も多い。単に、見守っているだけなので、子どもはすぐに飽きてしまって、「ママがいい!」と叫んだりする。モラ夫たちにとって、子育ては、妻の責任なので、子どもの態度が「悪い」と、「お前(妻)のしつけがなっていない」と妻を叱責することになる。

「妻がやるべきことを俺がやってあげている」

 さて、「自称イクメン」だけでなく、真正のイクメンでもモラ夫はいる。  妻もフルタイムで働いている30代の夫婦は、結婚して数年で娘を授かった。夫は、勤務時間が比較的自由で、子煩悩だったため、積極的に子どもを世話してきた。料理はしなかったが、掃除、洗濯の一部を分担する等、日本男性としては、優秀な部類に入る。  ところが夫は、些細なことでキレて、怒鳴り散らす。例えば、夫の旅行鞄が見つからないと、「どこへやった!みつからないじゃないか!」と妻を詰りだし、1時間近くもえんえんと文句を言う。そして、俺はこんなに努力しているのに、なぜ評価されない!と大声を張り上げる。つまり「妻が負担するべき家事、育児を分担」してやっているという意識なのだ。  妻が反論しようものなら、いつでも俺が悪者にされるとキレて、包丁を持ち出し、「そんなに言うなら、俺を殺せ」と妻に迫る。つまり、妻からの批判は一切受け付けないのだ。  イクメンの彼であったが、娘のイヤイヤ期を乗り越えることはできなかった。自我の芽生え始めた娘にキレ、娘に対しても大きな声で怒鳴るようになった。  この夫婦はその後、別れた。娘は、父を「ガミガミさん」と密かに名付けていたが、今は「ガミガミさん」と別れて、伸び伸びと暮らしている。  以上、私の知る限り、多くの日本男性は、「父」になることができない。男の子の育て方、男を甘やかすモラ文化(男尊女卑等を始めとする、モラ夫を生み出す社会的、文化的規範群)に根本的問題があるのだろう。  男の子には小さいうちから、よい父、よい夫になる訓練をし、家庭の幸福とは何かを教える必要があると私は思う。

まんが/榎本まみ

【大貫憲介】 弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
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