北朝鮮からの視察団の手配をしている大連の旅行会社によると、視察先は、道路管理やごみ処理システム、冬場のお湯暖房供給など市民生活に不可欠な公共インフラ施設の視察から外資も含む大規模工業団地の運営会社、スマートフォン用のアプリを開発するIT企業など多岐にわたっているようだ。
大連は、中国の都市では創成期に日本企業を中心とした外国企業の誘致を成功させた実績がある。北朝鮮はそのへんの経験やノウハウを参考にしているのかもしれない。
北朝鮮高官が宿泊を熱望するフラマホテルのサイト
北朝鮮からの視察団のほぼ全員が宿泊先として希望するのが「フラマホテル」だ。同ホテルは、中国東北3省初の5つ星ホテルだが、30年以上の歴史がある古いホテルなので、現在、大連の5つ星ホテルの中では、中の下くらいの価格帯となっている(公式サイトにて連休を避けた4月中旬で調べると1泊約1万4000円ほど)。
日本人の出張者からするとさほど高額な価格帯ではないが、北朝鮮の物価かからするとかなりの高額になるだろう。しかし、それでも視察団のほぼ全員が異口同音にフラマホテルを熱烈に希望するのは、2010年5月に金正日総書記がこのホテルに宿泊したからだ。フラマは北朝鮮人にとっては憧れのホテルであり、むしろ、フラマ以外の選択肢はないのかもしれない。
「帰国したら家族や親戚に写真を見せて自慢できると話していました」(旅行会社代表)
大連は中国の1地方都市であるが、金日成主席、金正日総書記、そして、金正恩党委員長と3代が訪れ、しかも、3人とも宿泊している稀有な都市だったりする。この点から考えると、大連は、ずっと以前から北朝鮮にとって熱い視線が注がれ続けてきた都市だったと言えるのかもしれない。
<取材・文・写真/中野鷹(Twitter ID:
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