IT技術書だらけの同人誌即売会が大人気。その理由とは?

柳井政和
技術書典6

技術書典6公式Webサイト

ニッチなジャンルの同人誌即売会

技術書典』というイベントをご存じだろうか? 「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を対象にした、同人誌即売会だ。  昨年までに5回開催されている。そして第6回「技術書典6」が、2019年4月14日に、池袋サンシャインシティで開催される。  前回、2018年10月8日の来場者数は10,340人、参加サークル数は470。全サークルの持込部数は約10万6千部。1日で7万5千冊が販売され、1人当たりの購入数は7.5冊だった。その盛況振りは、NHKでも取り上げられた。  同イベントは、筆者も第2回からサークル出展しており、その人気振りを体感している。IT系の人間には定番のイベントになりつつあり、これまで同人誌即売会に足を運んでいなかった層も多数来場している。  『技術書典』は、マンガを中心とした同人誌即売会とは違う、ニッチなジャンルの即売会として、新たな潮流を生み出している。

運営がIT系の人間ならではの「かゆいところに手が届く」感

 それでは詳しく『技術書典』と技術系同人誌界隈の話をしよう。  『技術書典』の第1回は、2016年6月25日に秋葉原通運会館で開催された。その際、多数の来場者があり、整理券まで配布された。そのことはTwitterでも話題になり、「人が多く来るイベントのようだ」と多くの人に認知された。  第2回は、2017年4月9日で、アキバ・スクエアに移って箱を大きくした。第3回は同年の10月22日、第4回は2018年4月22日と、同じ会場で開催された。  第5回は、2018年10月8日で、池袋サンシャインシティに移り、さらに箱を大きくした。第6回は2019年4月14日の予定となっており、年2回のペースでこれまで開催されている。  こうした技術書中心の同人誌即売会が成立するとは、一昔前では考えられなかった。しかし、ブームの兆しはあった。  私事になるが、翔泳社の『CodeZine』というサイトで、2014年12月9日から数回にわたり『ニッチでエッジな技術本をゲットしよう! ~IT技術者向けコミケ 初心者ガイド(2014年冬版)』という記事を書いた。  第1回は、コミックマーケット(コミケ)への参加の仕方から、技術系同人誌のサークル紹介までをおこなうものだった。第2回は、前回募集した技術系同人誌サークルとその本を、イベント前に紹介するものだった。第3回はコミケ後のレポートで、実際にコミケで入手した27冊、合計金額9290円分、合計ページ数1506ページの総レビューをおこなった。  そうした記事が、IT系出版社の商業サイトで成立するぐらいに、技術系同人誌のサークル数は多く、興味を持つ人が多かった。『CodeZine』でのコミケの技術系同人サークルの紹介は、その後編集部の手に移り、毎回続けられることになった。  その2014年末の記事から1年半後に、第1回の『技術書典』が開催された。主催は『TechBooster』と『達人出版会』だった。  『TechBooster』は、先の『ニッチでエッジな技術本をゲットしよう!』でも最初にリストに取り上げた、技術書系同人サークル最大手だ。ニッチな小規模のサークルが多い中、毎回、大量の段ボール箱で新刊を搬入して頒布する、強い販売力を持っている。  『達人出版会』は、IT系技術書の電子書籍の制作・販売を行う会社だ。IT系の人間たちの間では、良質でニッチな本を出す所として名前が知られている。この会社は、『日本Rubyの会』会長で『高橋メソッド』の考案者としても知られるエンジニアの高橋征義氏が、2010年に立ち上げた出版社だ。  『技術書典』が立ち上がった時、この2つが組んだということで「これはガチだ」という印象が強かった。その後、第2回から筆者は出展を続けているが、集客力、改善力、運営のどれを取っても、上質のイベントになっている。  たとえば過去にこういうことがあった。情報を登録するサイトのトラブルをTwitterで報告すると、すぐに返信があり、数時間で対応が成された。そうしたレスポンスのよさが『技術書典』にはある。また、運営側がIT系の人間で、勘所が分かっていることも大きい。かゆいところに手が届き、絶えず改善が続けられている。  技術系の本を売るマーケットとしても良質だ。通常の同人系イベントでは、コミックマーケットが最も売れるイベントで、その他のイベントがそれに続く。しかし『技術書典』の売り上げは、コミケを上回ることが多い。  また『技術書典』は、同人の枠を超えて、企業でも注目されている。『技術書典』では同人誌だけではなく商業誌も販売可能だ。IT系の出版社なども参加して、自社の本を販売することができる。  企業の活動としては、もう1つ注目すべき点がある。それはスポンサーだ。多くのIT系のイベントでは、スポンサーを募り、それらの企業の名前が各所に表示される。人材流動性の高いIT業界では、こうしたイベントに出資することで、転職市場で自社を選んでもらう切っ掛けにする。単純に広告を打つよりも、遥かに企業に興味を持ってもらえるからだ。  『技術書典』でも、そうしたIT系のイベントと同様に、スポンサーを募っている。今年のゴールドスポンサーは「mixi GROUP」、前回のゴールドスポンサーは「リクルート ライフスタイル」と「メルカリ」だ。  その他にも、シルバー、ブロンズのスポンサーに、勢いがあったり、尖っていたり、アンテナの高い企業が名を連ねている。各回で、どういった企業がスポンサーに入っているかも注目のポイントだ。
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