日本の労働市場が人手不足に悩まされる一方、韓国では若者の失業率の上昇が問題となっている。’17年には青年失業率(15~29歳)が過去最悪の12.3%を記録し、その後も劇的な改善は見せていない。’97年のアジア通貨危機以降、韓国では少なくとも’00年からこの状態が続いており、解決に至っていない。
(左図)大企業と中小企業の勤続年数別年収格差(出典:韓国統計庁)/(右図)大企業と中小企業の数の比較(出展:中小企業中央会)
’05年の82.1%から下降線を辿っているものの、大学進学率は70%台で推移しており、国民の約8割が大卒にあたる。しかし、大卒者であっても財閥系大企業に入れなければ30歳で年収200万円台が妥当な金額。そのため、高学歴貧困者の数が世界トップレベルにあると言えるのだ。そんな韓国の実態に迫った(通貨レートは’19年3月現在)。
ソウルの小売会社に勤めるイ・フンミンさん(仮名・30歳)は、地方都市の出身で、現在ソウルで弟と2人暮らし。韓国でトップ10に入る某大学を卒業後、就活をするも連敗し、大手スーパーマーケットの高卒枠でようやく採用された。だが、馬車馬のように働いて月収はわずか120万ウォン(約11万800円)。現在のIT系企業の月収は150万ウォン(約14万円)で、交通費は含まれていない。
「家賃と光熱費、食費や被服費、交際費で1ウォンも残りません。8月に奨励金が出るのでそれが頼みの綱です」
奨励金とは、韓国政府が若年層雇用促進のため打ち出した「青年追加雇用奨励金」のこと。満15~34歳の青年を正社員として雇用した企業に対し、企業規模に応じて一人当たり最大2000万ウォン(約197万円)負担する制度だ。ただ、被雇用者は3年間勤める義務がある。イさんもその制度で就職できたわけだが、根本的解決には至っていない。
「奨励金が入ればだいぶラクになります。しかし、今の会社にいる限り基本給が上がるわけではないので一時しのぎにしかなりません」
イさんの友人のホン・チャンスさん(仮名・33歳)は、失業保険を受けながら就職活動中で、インタビュー時も面接用のスーツを持ち歩いていた。芸人のイジリー岡田に似た風貌のホンさんはこのように話す。
「僕は、芸能界志望でした。最初は歌手を目指していたけど、顔がダメだと言われ、ならばブサイクを生かそうと芸人のオーディションも受けたけど、それも落ちた。YouTuberになる手もあったけど、まず機材を買うカネがなかったし、何しろ毎回動画を撮るとか無理。それで、就活を始めました。エントリーシートはもう400枚は書きましたね」
地方大出身のためソウルの大卒より不利だが、それでも社会福祉系資格と難易度の高いIT系資格を保有していたため、病院の事務職に採用された。年俸3200万ウォン(約315万円)と悪くなかったが、1週間で辞めたという。