さぁ春だ。苦悩する人も、AI時代に不安な人も、今こそ田んぼを始めよう。米作りで得られる20のこと

野菜作り、日曜大工etc.米作りを通してできるようになったこと

収穫で、ついもれる笑顔

収穫で、ついもれる笑顔

「マイ田んぼ」は、ひとり50㎡の区画で田植えから草取りを経て収穫まですべて自分で行い、育てたお米を手にできる。一つの田んぼをみんなで作業するプログラムは全国津々浦々あるが、初心者に手頃な広さを初めから終わりまで自分だけの作業で完結できるプログラムはあまりない。自分の区画で汗水垂らして育てたお米を食べたら、そりゃ、世界一うまくて感動モノだ。そして何より「これで何があっても生きていける」という自信になる。  だがそれだけで終わらない。それ以外にも、いろんなことができるようになる。米作りは、可能性の扉なのだ。俺を含めて米作りの参加者ができるようになったことは、例えば……。 ・熟睡  自然の中で太陽や風を浴び、体全体を動かし、汗を流す。当たり前の健全性を取り戻すことで、作業した夜は心地よい疲労感で深い熟睡に導かれる。 ・野菜作り  田んぼに来る方々で野菜を作りたいという希望者には、近くの小さな畑を無償で使ってもらう。 ・梅干し、梅酒、梅酵素ジュース作り  6月、ご近所さんから「うちの梅林が実ってるから好きなだけ採って」となり、持ちきれないほどの梅を無償で収穫。赤シソも畑に自生している。結果、皆おのおのが家で梅干しをはじめ、梅酒や梅酵素ジュースを作るようになる。 ・無償で食べ物を得られる  地元の方々とつながり、田んぼ周りや周辺の里山に自生する季節の山菜を見分けて採れるようになったり、森の中での椎茸栽培なども教えてもらったり。無償で食べ物を得られる知恵を授かる。 ・傷処置  ちょっとした切り傷や怪我は、そのあたりに生えている草木で応急措置。怪我した人も、それを見守る人も、その効能などにびっくりする。
初めて竹を切る

竹を切るのも、初めての体験

・木や竹との付き合い 竹を切ったり割ったり、木を倒したり、薪を割ったり、道具の使い方を習得、実践できるようになる。 ・土木の知恵や技術  田んぼに水を引くことや水を抜くこと、水たまりや湿気が多い場所の改善など、土木の知恵や実践を身につけられる。 ・DIY(Do it yourself:日曜大工)  田んぼ周辺で、スモールハウス、微生物循環トイレ、ドラム缶風呂の東屋、物置倉庫などを作ったり、近くの移住者向けの古民家をリノベーションしたり。そういう大工作業を手伝ってもらうことで、道具の使い方から建物の作り方などを自ずと学べる。

「生きていける」という自信

刈り取った稲穂を干す

刈り取った稲穂を干す

 これだけでもすごいことだが、米作りから波及してできるようになったことはまだまだある。 ・火との付き合い  焚き火にとどまらず、薪でご飯を炊いたり、ドラム缶風呂を沸かしたり、火が間近なものになる。 ・枝豆穫り  9月、ご近所さんから「枝豆、穫りきれないから、好きなだけ持って行ってくれ」と連絡をいただき、無償で枝豆取り放題。 ・柿酢作り  10月、リノベーションしている古民家の柿の木がたくさん実をつけたので、皆で食べきれないほど無償で取り放題。残った柿は各おのおのが家で簡単に作れる柿酢に挑戦。
里山から田んぼへ降りてゆく

里山から田んぼへ降りてゆく

・料理 「料理しない」「料理が嫌い」という人も、家での自炊が多くなる。美味しいもの作る喜び、美味しいものを食べる喜びが増し、舌が肥える。11月には「収穫祭」と称して、参加者はみな手作り料理を一品ずつ持ち寄り、田んぼフィールドは祝いの宴となる。 ・縄や注連縄(しめなわ)作り  米を収穫した後に残る藁(わら)を束ねて縄を編む。12月には注連縄作りを地元の農家さんから教えてもらい、お正月におのおのの家の玄関に自作の注連縄を飾る。応用すればリースやブーケやなども簡単に作れる。 ・味噌作り  マイ田んぼのそれぞれの区画の畔に大豆を育てて収穫。それをもとに1月末、手前味噌を作る。 ・染色・服・化粧水  NPOのメンバーが、野花や草木などの自然素材を使って染色・化粧水作り・服や下着作りなど、ミニワークショップを開催する。 ・地方への移住 「都会を離れて移住したい」。政府の統計でもそういう願望者は20〜40代で増えていて、都市住民の3~4割。実際には、自主的に移住できる人はまだまだ少ない。だが米作りを経験すると、移住へのハードルがグンと下がる。上に記したことを経験して「移住しても生きていける!」という漠然とした自信になるからだ。去年だけでも匝瑳市への3人のほか、八丈島・静岡・飛騨高山(岐阜県)・綾部(京都府)・高知・山口へと移住していった。 ・年配者へのリスペクト  数年前に匝瑳に移住した、ITやデザインや映像を仕事にしてきたYさんが言った。「困ったら何でも直したり解決したりできる地元の年配者を見て、純粋にスゴイと思ったんだよね、自分もそういう歳を重ねたいから移住したんだ」。自然の中で生きる知恵を持っている年配者からたくさんのことを学ばせてもらえて、ただただ嬉しくなる。
なんでも直し、なんでもできる、リスペクトする人生の先輩

なんでも直し、なんでもできる。リスペクトする人生の先輩

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