こうしたお粗末とも言える慰霊碑に対して、現地紙『ザ・サン』は「
日本の侵略者を讃える記念碑が大失敗」という記事を掲載。退役した軍人や警察官から成る団体「National Patriots Association」(パトリオット)代表の声を取り上げている。
「彼らは侵略者だった。なぜ我々が彼らを褒めたたえなければいけないんだ? とても間違っている。(慰霊碑を)取り壊せ。彼らは英雄じゃない!」
同記事では、マレーシア華人協会の公共サービス・苦情処理機関のマイケル・チョン氏も、日本占領時代を体験した世代は不満を持つだろうと指摘している。
「母国を侵略した者を讃えることはできない。家に侵入し、略奪して女性をレイプした者を祝するようなものだ! まったく不適切だ! 人々、特に高齢者は喜ばないだろう。慰霊碑があるべきではない。取り壊すべきだ」
記事からは、犠牲となった兵士を讃える看板だけでなく、慰霊碑そのものを取り壊すべきだという機運が高まっていることが伺える。
また、同じく現地紙『ザ・スター』(リンクは英字メディアのAsia News Networkに配信したもの)には前出の人名の誤りなども含め、「
ケダ州の日本慰霊碑 “翻訳が間違っていた”」という記事が。
“州の観光協会会長Mohd Asmirul氏は、日本当局が地元業者と看板についてやりとりをしていたときに誤りがあったと語った。「お互い意思疎通をしようとする様子はニワトリと鴨のようだった」と彼は言う。使われる文言については日本総領事と話しあったそうだ”
「二度と戦争をしてはいけないことがわかるようにすべき」
マレーシア側はあくまで日本と業者間の問題だとしているが、いったいどういった過程で“誤訳”されたのか気になるところだ。慰霊碑が建てられた場所には以前から日本兵の墓があったそうで、前出の観光協会会長は同記事でその点も強調している。
「こうした歴史的建造物(日本兵の墓)は、世界が二度と戦争をしてはいけないということがわかるよう、若い世代のために保存するべきだ」
「以前の慰霊碑は長い間ここにあった。今回はそれを改修しただけだ。これはあくまで歴史だ。起きたことは起きたこと」
こういったコメントを見ると、やはり問題となったのは慰霊碑そのものではなく、「英雄」などの文言が書かれていた看板にあったことがよくわかる。
日本ではあまり話題になっていないが、”親日国家”として知られるマレーシアでこういったトラブルが起きているのは、なんとも残念な話だ。はたして、批判が殺到している慰霊碑はどうなるのか? 今後の動向に注目したい。
<取材・文・訳/林 泰人>