記者会見では通常、会見終了後に報道陣が会見者と個別に補足の質問などをする取材が行われる場合がある。それが、複数のメディアが会見者を取り囲む立ち話などになる場合は「囲み取材」と呼ばれる。
筆者と鈴木氏が、この会見の終了後に囲み取材を試みたところ、阪田代表が快く応じてくれた。しかし何せ取材に来ているのは筆者と鈴木氏だけ。筆者たちのほうが日本母親連盟関係者たちに取り囲まれながら阪田代表らに話を聞くという、「囲まれ取材」になった。
「何社くらいのメディアに会見案内を送ったのか」(筆者)
「レターを配布させていただいただけで、1つ1つにアプローチはしておりません」(阪田代表)
初っ端から話が噛み合わない。個別にアプローチしたかどうかではなく、何社に案内を送ったのか尋ねているのだが。
「記者会見をもともと予定していたのですが、よくご存知だと思いますけど、私達自身もちょっと不安に思うのが、せっかく私達の思いを伝えたくても、曲がって捉えられたりとか変なふうに面白おかしくされたりするのが嫌だなあと思ったんです。なので、あえて告知をしないで、ここで動画を撮って(メディアに)提供すると、それを採用していただけるということだったので、こちらからあえてアプローチをして呼ぶことはしなかった。レターは、一般的なプレスリリースは配布しましたけど、特に個人的に呼んだりとかそういったことはしないでおりました」(阪田代表)
「アプローチはしていない」が「レターは送った」という、要領を得ない説明だ。メディアは興味を持てば、「個人的に」呼ばなくても来るはずだが。
「一つだけお伝えしておきたいんですが、(日本母親連盟監事の)内海さんとかが、たぶんぼくらのことを、山本太郎さんのあの(226事件の)件のサクラだみたいに書いているですけども。ぼくら山本太郎さんや事務所と事前に一切接触してなくて、逆に、ぼくらも母親連盟はどうなのかなと思っていまして。『山本太郎、こんなのに協力していいのか』と思って取材に行ったらああいうことが起こったので、びっくりして記事にした。ぼくらサクラじゃないんです。素で一緒にびっくりしてた側なので、(日本母親連盟と)仲間だとぼくは思っているんです」(筆者)
その後に予定されているパーティーの件に話が移った。阪田代表等によると、パーティーは日本母親連盟の「正会員限定」なのだという。しかし、
同連盟の公式サイトや「こくちーず」に掲載されていたパーティーの告知には、そのような説明は一切なかった。それどころか
「会費 :10,000 円 (正会員 5,000 円)」と表記されており、正会員以外も参加可能なイベントであることは明白だ(参照:
日本母親連盟サイトのWeb魚拓)。
設立決起パーティ(東京都)告知
「正会員限定」のパーティーなら、このような表記は不要なはずだが……
もともと「正会員限定」であったかのような説明は明らかに虚偽。筆者らに送られてきた入場お断りのメールの表記も「関係者のみ」となっており、正会員云々というルールは、この会見の場になって初めて告げられた「後出し新ルール」だ。
事実上、彼らが気に食わない人物を入場させないための意図的な選別と言える。筆者たちが事前に支払ったパーティー参加料は、振込手数料分の金額もあわせて、その場で返金された。
「ちなみに倫理法人会の人の関係の方って、けっこう(日本母親連盟に)けっこういらっしゃるんですか?」(筆者)
「倫理法人会の人って、その辺歩いたら必ず倫理法人会の人に当たりますよ。そのくらいいらっしゃいますよ」(阪田代表)
いちいち、質問の答えにならない言葉が返ってくる。
日本母親連盟と倫理法人会は一体でないと言いつつ……
「(倫理法人会の人は)6万7000人とかいらっしゃるみたいなので。山本太郎さんは(226事件で)、ああ、6万7000票失ったなと思いましたね」(白河氏)
日本母親連盟と一緒に選挙はできないと宣言した山本氏が倫理法人会会員分の票を失うというなら、やはり日本母親連盟は倫理法人会と一体だと言っているようにも聞こえるが。
この日のパーティーの定員は当初400人だったが、後から150人に減った。「こくちーず」上で表示されていた最終的な申込数は111人だった。当初見込んでいたほどの人数が集まらず、定員数を減らしてもなお定員割れ。
前述の同連盟のメールマガジンの文面をもう一度見てみよう。
〈226事件にはびっくりのマザリーメルマガ編集部でしたが、その後もバッシングが続く一方で、支援者も確実に増えています。フタッフ希望者、各地のイベントの申し込みも増えており、「太郎さん、宣伝してくれてありがとう!」と思っております〉
しかし実際には、設立記者会見で筆者たち以外の取材メディアはゼロ。パーティー参加者は当初見込みのおよそ4分の1。「226事件」による宣伝効果があってもなおこの有様とは、結成から半年で38支部を設立し会員数5292人と豪語する割には人望がない団体だ。
日本母親連盟や関係者たちは、保守運動やニセ科学との関連性だけではなく、ウソをついたり誤魔化したり、批判的報道を排除したり中傷したりする傾向も目につく。これが果たして信頼に値する政治団体と言えるのか。今年の統一地方選や参院選では、政治家や候補者とこの団体との関わりを注意深く見ていく必要がありそうだ。
<取材・文・写真/藤倉善郎(
やや日刊カルト新聞総裁)・Twitter ID:
@daily_cult3 取材協力/鈴木エイト Twitter ID:
@cult_and_fraud>
ふじくらよしろう●1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『
「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)