流ちょう過ぎる話術はなぜ心に残らないのか?

 コミュニケーションスキルを高める演習の参加者に、演習でどのようになりたいかを聞くと、相当程度の人が「流暢に話せるようになりたい」という意味のことを言う。スラスラとよどみなく、話しができたり、プレゼンテーションができたりするようになりたいというわけだ。

流ちょうに話すと聞き手の関心度は低下する

photo via Pexels

 しかし、実は流ちょうに話せば話すほど、スラスラと話せば話すほど、聞き手は集中度、関心度を低下させてしまう。このように申し上げると、「逆ではないか」「話に詰まったり、言葉が出なかったりするから、聞いてくれなくなるのではないか」という反応が返ってくる。  実際に話し手と聞き手の状況を観察してみると、話し手が流ちょうにスラスラと話すということは、間(ま)をおかずに話しているという状態だ。間をおかないので、聞き手の理解速度に差があったとしても、多かれ少なかれ、聞き手はそのうち話についていけなくなる。  話についていけなくなるということは、理解ができなくなる。それが続くと、諦めの感覚が生じて、関心度が低下してしまうのだ。

大切なのは聞き手が「反芻」する時間

 逆に、話し手が話に詰まったり、言葉が出なかったりするという状態は、話していない時間帯が生じて、そこに間ができる。間ができている間に、聞き手は、「これまで、こういう話だったな」「次は何を話そうとしているのだろう」というように、話し手の内容を反芻できる時間を持つことができる。  話し手の内容を理解したり、次の話を想起したりしている間に、自然と話し手の話に関心を高めたり、集中度が高まるのだ。  もちろん、すべての聞き手が、間ができるたびに、関心度、集中度を高めているわけではない。しかし、演習や企業でのサポートでの実例をふまえると、間ができたときには、関心度、集中度を低下させる人よりも、逆に高める人が圧倒的に多い。    それは、流ちょうなよどみない話と、詰まったり言葉が出なくなったりすることのある話とでは、流ちょうな話のほうが眠くなる確率が高いということからも言える。
次のページ
適度な会話の間が理解度を高めてくれる
1
2
ひとつの質問で合意形成できる! ビジネススキル急上昇 日めくりドリル

ひとつの質問で、合意形成できる! 1日1問で確実にデキるようになる! 年間100社・5000人、20年以上実践してきた能力開発プログラム

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会