ブラクラURL書き込みで中学生補導。広がる警察とIT業界のデジタル・デバイド、募る不信感

柳井政和
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ブラクラURL書き込みで中学生補導のニュース

 3月4日にNHKが報じた兵庫県のニュース「不正プログラム書き込み疑い補導」は、瞬く間にネットに広がり、多くの避難の声が発せられた。当該記事は、公開期限が過ぎたために既に消えている。そこで、同日に公開されたサンスポの記事を紹介しておく(参照:消せない画面…不正URL貼り付けた疑いで中1女子ら家宅捜索)。  上記の2つの記事の内容はほぼ同じだ。兵庫県警サイバー犯罪対策課が、不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、愛知県刈谷市の中学1年の女子生徒(13)らの自宅を家宅捜索したというものだ。中学生以外は、山口県下松市の無職男性(39)と、鹿児島県霧島市の建設作業員の男性(47)の2人だ。同課は女子生徒を児童相談所に通告し、男性2人を書類送検する方針だという。  実際のプログラムは、ブラクラ(ブラウザクラッシャーの略)と呼ばれる種類のものだ。アラートが表示され、ボタンを押して閉じても何度もアラートが表示される無限アラートの処理である。嫌がらせではあるが、ブラウザのタブを閉じれば終了できる。ブラウザやパソコンを破壊するようなことはない。実害のないジョークプログラムだ。

非難の声を上げるIT業界

 この報道に対して、多くのIT関係の人が非難の声を上げた。それにはいくつかの理由がある。  まず、無限アラートのプログラムは、そもそも不正指令電磁的記録供用未遂に当たらないだろうというものだ。不正指令電磁的記録に関する罪とは、コンピュータ・ウイルスの作成、提供、供用、取得、保管行為に対して制定されたものだ(参照:「不正指令電磁的記録に関する罪」警視庁「しそうけいさつ化する田舎サイバー警察の驕りを誰が諌めるのか」高木浩光@自宅の日記)。  本件のプログラムは、コンピュータやその利用者に害を与えるものではない。つまりウイルスとは言いがたいものだ。  それに、実際にやったことは「リンクを張った」ことに過ぎない。実害のないサイトにリンクを張っただけで家宅捜索が必要になるのか。もしそうなら、警察が圧力をかけたい相手に対して、自由に家宅捜索ができる。そうしたことが情報技術的活動に悪影響をおよぼし萎縮させる。そうしたことがIT業界では危惧された(参照:「兵庫県警へ『不正指令電磁的記録に関する罪』の情報公開請求をしました」ろば電子が詰まつてゐる「勉強会の活動休止のお知らせ」すみだセキュリティ勉強会「『ウイルス罪』適用範囲、全都道府県警に開示請求 エンジニアが進ちょく公開、議員に陳情も……いたずらURL事件受け」ITmedia NEWS )。  また、もし本気で、ジョークサイトをコンピュータ・ウイルスと見なしているのだとしたら、警察の情報技術に対する認識や能力には疑問符が付く。そのことに対する困惑も見られた。
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警察の暴走は新しい技術の芽を摘む可能性も
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