大阪入れ替えダブル選挙の暴挙に出た維新。橋下徹も政界復帰か?

「終わった話」を蒸し返す愚

橋下徹氏

橋下徹氏

 松井知事が橋下徹・前大阪市長と面談を重ねる菅官房長官と、公明党に影響力を持つとされる佐藤副会長の2人は、去年2月の名護市長選6月の新潟県知事選や9月の沖縄県知事選などの重要選挙に関わってきたが、大阪でも動いた可能性があるというのだ。地元記者はこう続けた。 「これまで菅官房長官は公明党と維新の両方に寄り添いながら、飼い慣らしてきました。創価学会の組織力を有する公明党と国政選挙や地方選挙で連携する一方、維新からも与野党対決法案での国会審議や改憲論議での協力を引き出してきたのです。  公明党が妥協して住民投票が実現した2015年と同様、今回も菅長官・佐藤副会長コンビが維新と公明の決裂回避に動いたのは間違いないでしょう。しかし、今回は決裂回避とならなかった。  前回は橋下市長(当時)が『総選挙に鞍替えをして、公明党現職の選挙区から出る』と啖呵を切っていましたが、今は政界引退中で維新のパワーダウンは否めない。国政選挙でも議席を減らし続ける落ち目の維新に対して、公明党府議や市議が主戦論に傾いて『いま維新と手打ちをしたら統一地方選が戦えない』と妥協を拒否したようです」  2015年は中央の菅官房長官と佐藤副会長の思惑通りに決裂回避で住民投票実現となったが、同年11月に「否決なら辞任」と明言していた橋下市長が辞任(政界引退)、維新のパワーダウンで地元の公明党を抑えきれなかったというわけだ。 「しかもダブル選挙の大義名分である大阪都構想への住民の関心も低くなってしまった。2015年の住民投票で一度否決され、『大阪都構想はもう終わった話』と冷めた目で見ています」(地元記者)  それでも2017年のダブル選挙で再度の住民投票実施を掲げて当選した松井知事と吉川市長は、諦めようとしていない。法定協議会で、府議会と市議会での過半数確保のカギを握る公明党が消極的姿勢に転じたのを見た維新は、住民投票への協力を記した「密約」を暴露したが、逆に公明党の態度硬化を招いて全面対決に至ってしまったのだ。

大阪万博&カジノ誘致を餌にしたい維新

政界引退をした橋下徹氏

前回(2015年)の大阪都構想住民投票が否決され、政界引退をした橋下徹氏

 そんな維新が追い風にしようとしているのが、2018年11月23日の2025年の大阪万博開催決定だ。博覧会国際事務局の総会が開かれたパリで開催決定を祝った松井知事は11月25日に帰国した際、「吉村市長と僕だからできた。これを制度にするのが大阪都構想だ」と大阪都構想実現に意欲を示した。  しかし開催決定の翌24日、共産党の辰巳孝太郎参院議員(大阪選挙区)は、ツイッターでこう批判した。 「これで大阪は万博を口実にした、カジノのための巨額インフラ投資等を行おうとするだろう。カジノ企業は高笑い。カジノ単体では巨額インフラ整備等を正当化するのは無理があるからこそ万博の誘致があった。万博オフィシャルパーにカジノ企業5社が名を連ねている事が全てを語っている」  地元住民の関心が薄れた大阪都構想を、万博誘致の熱気で蘇らせようとする松井知事。これに対して辰巳議員は「万博はカジノ関連の巨額インフラ投資の口実」と指摘した。実際、大阪万博では会場整備に1200億円超(国と大阪府市と民間が負担)、運営費に800億円、交通インフラ整備も700億円以上と試算されている。  松井知事と吉村市長は2017年9月1日、トランプ大統領の大口献金業者で米国カジノ大手の「ラスベガス・サンズ」のアデルソン会長と非公開で面談。カジノ面積上限規制に懸念を表明したと報じられた。  すでに吉村市長は「(カジノ建設候補地である)夢洲への鉄道延伸費用200億円負担がカジノ業者選定の条件」という方針を打ち出している。これには、甘いカジノ規制(面積上限撤廃や貸金業規制法の特区扱いなど)と引き換えに海外カジノ業者に200億円ものインフラ整備費を負担してもらおうとする狙いが透けて見える。否定的な見方もある万博開催を拠り所にして大阪都構想実現を正当化することに対しては、当然、賛否が割れても不思議ではないだろう。
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橋下氏がお得意の前言撤回で政界復帰の可能性も!?
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