日米地位協定が、ロシアとの北方領土交渉の足かせになっている!?

 日本と米国の間でかわされている「日米地位協定」。あまりに米国に有利な協定のため是正する必要性が叫ばれてきたが、一向にその不平等は解消されていない。そしてこの地位協定が、ロシアとの北方領土交渉にも影響を与えているという。

北方領土返還交渉にも足かせとなっている地位協定

安倍首相は2島先行返還に意欲を見せているが、交渉は難航

「日米地位協定は、北方領土返還交渉にも悪影響を及ぼしています」と、『東京新聞』論説兼編集委員の半田滋氏は指摘する。 「日米地位協定では、米国は日本のどこにでも米軍基地を設置でき、それを日本側が拒むことができないうえ、基地の返還には米国の同意が必要なのです。そのことはロシア側も知っています。北方領土を日本に返還した際、そこに米軍基地を置かれたら、ロシアとしてはたまらない。もともとロシアには北方領土を返還するつもりはなく、日米地位協定が格好の口実となっているのです」  昨年秋の日ロ首脳会談でも、プーチン大統領は北方領土に米軍基地が置かれる可能性について、安倍首相を問い詰めた。  ジャーナリストの布施祐仁氏も「日本は、米国の了承なく『歯舞諸島・色丹島には米軍基地を置かない』とロシアに約束することはできません」と指摘する。

米軍基地を置く「権利」を認めているのは異例

北海道側から望む北方領土・歯舞諸島

北海道側から望む北方領土・歯舞諸島

「外務省の内部文書『日米地位協定の考え方 増補版』(1983年)には、“北方領土の返還の条件として『返還後の北方領土には施設・区域を設けない』との法的義務をあらかじめ一方的に日本側が負うようなことをソ連側と約することは、安保条約・地位協定上問題がある”と書かれているのです」  こうした日米の関係は、国際社会において異例だと布施氏は語る。 「米軍基地が存在するほとんどの国では、基地として使用できる土地の範囲や使用条件、使用料、提供期限などを契約として結んでいます。日本のように、どこにでも米軍基地を置き、自由に使えることを米国の『権利』として認めている国はほとんどありません」
次のページ
なし崩しになる在日米軍の活動範囲
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会