裁判権だけじゃない。あまりに不平等な日米地位協定の実態<伊勢崎賢治氏>
米国と地位協定を結んでいる他国と比べると、日本の「主権放棄」ぶりが際立つ。「地位協定」とは何か? どこが不平等なのか? 紛争地の現場や他国の地位協定をよく知る“紛争解決請負人”が解説する。
2月24日に辺野古基地建設の是非を問う沖縄県民投票があり、「反対」が43万票・投票者の7割以上を占めた。米軍基地問題をはじめ、安全保障や領土問題など、日本をとりまく情勢は今後どうなっていくのだろうか?
――沖縄県民投票の結果を受けて、日米関係はこれから変わっていくでしょうか。
伊勢崎:今のままでは何も変わらないでしょう。それは、日米地位協定という「不平等条約」の存在があるからです。現在の日本は、形式的には「独立国」ですが、地位協定によって主権が大きく損なわれているんです。世界中に基地を持つ米国が結んでいる地位協定の数は、100とも120ともいわれています。その中で最も米国の特権を認め、寛大なのが日米地位協定なんです。
――どういった点が不平等なのでしょうか?
伊勢崎:例えば陸上自衛隊は、もう十数年、アメリカの海兵隊と一緒に米国で共同訓練を行っています。そのとき、自衛隊員は“公用ビザ”で入国します。何の特権もない、旅行者と同じ待遇です。外交特権など法的な特権は一切ありません。もちろん、日米地位協定で米兵らに与えられている刑事免責特権もありません。一方、米兵が日本に来たときは、特別な場所を通って入国します。ビザもパスポートも要らない。日本にはそれを知る権利がないのです。
――裁判権については、よく話題になりますね。
伊勢崎:米国で自衛官が「公務」で自動車を運転中に米市民を轢いた場合、日本に一次裁判権はありません。ところが、これがドイツやイタリアの兵士だったら、一次裁判権はこの両国にあるのです。米国とドイツ・イタリアのような、お互いに平等な関係を認めることを「互恵性」と言います。この裁判権だけでなく、環境権、基地や空域の管理権についても、米国はすべてのNATO同盟国に互恵的な関係を認めていますが、日米間にはそれはありません。
日本の主権を取り戻せ!
日本はフィリピンやアフガンよりも不平等
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