「仕事があれば、再犯しない」。刑務所出所者を積極的に採用する「北洋建設」小澤社長の信念

樫田秀樹

鈴木宗男・元衆議院議員の後押しで法務省に直訴

法務大臣室

2018年4月、法務大臣室。左が上川陽子法務大臣(当時)、右が元国会議員の鈴木宗男氏

 そこで小澤社長が計画したのは、各刑務所への直訴ではなく、全刑務所を管轄する法務省への直訴だった。  これを手助けしたのが元衆議院議員の鈴木宗男氏だ。同じ北海道が地盤ということもあるが、小澤社長が15年前の29歳のときに北方領土へビザなし渡航をしたとき、鈴木氏が団長を務めていた縁で、以後、鈴木氏は北洋建設の活動に目をかけるようになっていた。今回は鈴木氏が一肌脱ぎ、政界のパイプを使って上川大臣への面会へとつないだのだ。  2018年4月24日17時15分。上京した小澤社長は社員に車椅子を押してもらい、上川陽子法務大臣(当時)の待つ法務省大臣室に入室した。  小澤社長は、2012年に身体機能を徐々に奪われる難病の「脊髄小脳変性症」に罹患した。知能に影響はないが、運動機能が低下していく不治の病で、実際、小澤社長は歩行能力が奪われ、発声も不明瞭になりつつある。指が常に震えるため文字を書けない。医者は発病時に「余命10年」を告げたので、単純計算すれば余命は3年だ。

「僕たちは出所者の更生に全力をかけています」

就職面接

北海道の月形刑務所での就職面接。写真手前が受刑者。今春から北洋建設に就職予定だ

 小澤社長は車椅子から、ところどころ不明瞭ながらも上川大臣に懸命に訴えた。 「大臣、僕たちは出所者の更生に全力をかけています。彼らに更生してほしいから求人ポスターもつくりました。それを全国の刑務所に送ったけど、貼っていないところが多い。その理由が『当施設が北海道から遠いから』という、地元に帰りづらい受刑者にすれば、実は好ましい条件です。だから、その理由はありえないです」  これに対して、上川大臣は「確かにその理由はおかしいですね。受刑者には、就職できるのはこのエリアだけと制限するのではなく、全国が対象となるべきです」と同意を示し、こう続けた。 「法務省から刑事施設に対して十分に周知していなかったため、出所者の更生が進まず、北洋建設には長い間ご負担をおかけしながらも、ただひたすら出所者を受け入れ頑張っていただいたことはありがたく思います」  上川大臣は行政の長として、一定の反省があることを公にしたのだ。
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熱意が動かした法務大臣
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