あなたの「燃え尽き度」は大丈夫? 日本の労働者の心を蝕む「感情労働」の呪縛

山本マサヤ
「感情労働」という言葉をご存じだろうか? これは「肉体労働」「頭脳労働」に次ぐ、第3の労働形態として、社会学者アリー・R・ホックシールドが提唱した労働形態だ。

労働の現場で「すり減る心」

photo via Pexels

「肉体労働」とは、工場や建築など肉体を駆使して働く労働形態であり、「頭脳労働」とは、コンサルや弁護士など頭脳を駆使して働く労働形態である。それに対して、「感情労働」とは、顧客のために自分の感情を抑圧して仕事をする労働形態で、心(精神)を駆使して働く労働形態である。  この感情労働の例として一般的に取り上げられるのが、看護師やキャビン・アテンダントである。このような職業の人は患者・乗客のため、わがままや理不尽に対するイライラを押し殺して、相手に満足してもらえるよう仕事を行う必要がある。つまり、自分の感情に嘘をつき続ける必要があるのだ。  感情労働は心を駆使するので、肉体労働で体が疲れたり、頭脳労働で脳が疲れるのと同様に、心もストレスによって疲れていく。  心にかかるストレスは、空気の入った風船にたとえられることが多い。風船を心として、そこに、ストレッサーというストレス要因の圧力がかかることで、風船のゴムが張る。ゴムが張って緊張し続けていると、疲労がたまっていく。これが、心(精神)の疲労につながる。また、ストレッサーによる圧力がかかりすぎると、風船(心)ははじけてしまう。  ストレス要因を放置しておくのは、ずっと風船(心)にストレスをかけ続けていることになるので、その日が終わって布団に入ったとしても、ストレスがかかり続けることになる。  肉体労働とは違って、感情労働はどれくらい心に疲労がたまっているのか、本人でも自覚しづらい。ある日突然、昨日まで元気で活発に仕事をしていた人が、うつ病で休んでしまうのもこのためだ。また、その解消方法についても「寝れば回復する」ほど簡単ではなく、対処法に関する知識が広まっていない。

感情労働の奴隷と化した日本人

 そして、日本人の多くは、この感情労働を頻繁に行っていると言える。日本人はいい意味で嘘つきだ。「社交辞令」や「空気を読む」という意味で、自分に嘘をついて感情を抑圧することが多い。  仕事でもプライベートでも、あなたが特定の人物と会話していて疲れてしまう原因はそこにある可能性が高い。上司だから、クライアントだから、嫌われたくないからなどの理由で、相手に意見を合わせたり、自分の意見を言えなかったりしていると、自分の感情を押し殺して感情労働をしているから、心が疲労して疲れてしまうのだ。その先にあるのは、自分の感情がわからなくなる、感情麻痺や脱人格化のようなバーンアウトという燃え尽き症候群だ。  現代の日本人は子供から大人まで、多くの人が感情労働の奴隷となっている。
次のページ 
可視化されにくい、心の疲労
1
2
関連記事