まだ現金決済の店は多いが……
タイはいま、政府主導の下、全土的にキャッシュレス化が進み始めている。とはいっても、まだ始まったばかりで現金主義であることには変わりがないが、着実にその下地はでき始めている。
タイではすでに10年以上前から銀行のキャッシュカードにデビット機能が付帯されているタイプが用意され、スーパーマーケットなどではよく利用されていた。
デビットカードは銀行口座と紐付けられており、残高からその場で引き落とされる機能だ。以前は機能付き・ナシを選択できたが、今は機能付きばかりになった。クレジットカードは最低所得などが高額設定されているため、普及率はいまだ高くはないが、デビットカードなら口座さえあれば持てることと、残高以上は利用できないため、無計画に使ってしまい、困窮することもない。
バンコク市内の電車のカードは「LINE Pay」と提携
バンコク市内を走る高架電車スカイトレイン(BTS)にも、日本の「Suica(スイカ)」のようなプリペイドカード「rabbit card」がある。これは当初は電車の乗車と、特定の飲食店などでしか利用できなかったが、今は提携店が増えたことと、2018年にタイの「LINE Pay」と提携し「Rabbit LINE Pay」が誕生したことでさらに利便性が上がっている。
タイのスマートフォンの普及率は高く、ユーザーの利用率が高いアプリのひとつが「LINE」になる。そのモバイル決済機能を利用して、BTSの「rabbit card」にチャージをすれば、窓口に並ばなくていいようになった。特に都心部の駅は朝夕は観光客も含めて大行列になっているので、タイムロスを避けることもできる。
この「Rabbit LINE Pay」は2018年にサービスが始まり、主要駅ではキャンペーンと同時にアクティベートを手伝ってくれるスタッフが立ち、急速に普及している。2019年2月の時点でもスタッフが対応している姿が見られるほど力を入れている。
このようにタイは今、電子マネーやモバイル決済が急速に発達している。その様子は日本以上のスピードがある。
タイでモバイル決済などが進んでいるのは、タイ政府が推し進める「タイランド4.0」が背景にある。
「タイランド4.0」とは、タイ政府が計画している長期経済開発のビジョンのことで、2015年に発表され、最終年となる2036年までの20年で高所得国入りを目標とする。
『4.0』というのは国家経済社会開発庁(NESDB)によると、第1段階が農業と家内工業が中心の時代、第2段階は戦後の天然資源や安価な労働力を活用した軽工業で成長した時代、第3段階は1980年代から現在における外資企業の進出に頼って重化学工業が中心となった時代を1.0~3.0としている。そして、イノベーションと生産性、サービス貿易をキーワードとして持続的な付加価値を創造できる経済社会を目指す段階に今あり、それを4.0と定義している。