人気の下町工場をモデルにしたドラマでは視察に来た担当者が、工場の持つ高い技術力に着目することとなっていたが、このような他にない技術力を持つ町工場など10%にも満たない。
実際にはどの工場の技術力もどんぐりの背比べで、誇るものもなければ他に勝るものなど何もない。
結局は大手からの仕事を受けるため、安さを打ち出すより他ないという状況に追い込まれている。
そして、そんな努力も虚しく大企業の事業見直しの際には、何の保証もないまま更に単価の低い工場へとあっけなく乗り換えられてしまう。
今回の債務者は工場を事業破産で畳み、その後は自己破産も検討しているという。
まだ義務教育期間中という娘さんの転校だけはなんとか避けたい様子だったが、状況は厳しいと言わざるを得ない――。
「安くて良いものを」
消費者がもつ当然のワガママだが、この言葉の犠牲となり奴隷のような扱いを受けることになるのは大手にぶら下がる下請け零細企業だ。
パワハラ対策、モラハラ対策、セクハラ対策、ブラック企業対策、個々の従業員に対する対応や考え方は飛躍的に見直され、世間の目も厳しくなりつつある。
零細企業に対する扱いは現状維持のままで良いのだろうか。
従業員個人に対する威圧的な対応や使い捨ては“イジメ”とも考えられ是正が進む一方、下請け中小企業や零細企業に対するイジメは、これらのしわ寄せのように厳しさを増す。
我々消費者はどうしても自分の生活に直結しない部分、影響や関係性が薄いと考えられる部分には無関心になりがちだ。
この無関心が巡り巡って零細企業の首を絞めることになっている。
どうして彼らには「努力不足」という言葉が、「自然淘汰」という言葉が、当たり前のようにぶつけられ続けるのだろうか。
<文/ニポポ(from トンガリキッズ)>
2005年、トンガリキッズのメンバーとしてスーパーマリオブラザーズ楽曲をフィーチャーした「B-dash!」のスマッシュヒットで40万枚以上のセールスとプラチナディスクを受賞。また、北朝鮮やカルト教団施設などの潜入ルポ、昭和グッズ、珍品コレクションを披露するイベント、週刊誌やWeb媒体での執筆活動、動画配信でも精力的に活動中。
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<写真/gumigasuki(Pixabay)>