忍び寄る世界恐慌の足音。注視しておくべきポイントとは?

 株、為替、不動産から仮想通貨まで、大きな成功を収めた7人に取材を敢行した。忍び寄る恐慌を前に、果たして、金持ちたちは何に備え、資産をどこに張ろうとしているのか? 『金持ちが考えたこと一覧』と題して考えるシリーズ。まずは現在の世界的な経済状況から備えが必要な理由を整理した。
2つの経済指標が示す”大恐慌の足音”

<2つの経済指標が示す”大恐慌の足音”>アメリカ国債の利回りの動きに注目。これまでの歴史から逆イールドカーブの発生が起きたらリセッションは近い。またアメリカの中古住宅販売件数も低下の兆しがあり、景気減退を匂わせている

さまざまな経済指標が示唆する世界的な景気後退の兆候とは!?

 消費税増税や社会保険料の引き上げによって、国民の可処分所得は減る一方。また、国の債務超過は過去最大を更新するなど、日本の景気は先行きが極めて不透明だ。 「’19年は減速の年、’20年は景気後退の年になるでしょう。世界的にも借金バブルの反動で、同時不況が到来すると考えられます」  こう予測するのは、経済アナリストの中原圭介氏だ。 「’08年のリーマンショック後の金融緩和により低金利が続き、あらゆる国で債務が増えすぎたのが最大の要因。現在、世界の合計債務は247兆ドル。これは前回の不況前の’07年当時の1.7倍にも及びます。借金に依存した経済がいずれ行き詰まり、不況が起きるのは歴史的にも明らかです」  中原氏が予測する不況の震源地はアメリカ。その根拠となるのは、「中古住宅販売件数」の推移だ。 「’17年11月に天井をつけてからトレンドは一変。住宅価格の高騰やローン金利の上昇を背景に下落が顕著になってきています。この流れが不況の前触れを示すサインに見える。というのも過去、’06年の秋口に住宅関連の指標が悪化すると’07年にパリバショックが勃発し、’08年のリーマンショックへと連鎖していきました。そう考えると、波乱の相場に備える“守りの姿勢”は欠かせない。日経平均で言うなら1万8000円を割り込む事態を想定しておくべき」  エコノミストのエミン・ユルマズ氏も、いずれ世界的な恐慌が来ると予測を立てる一人。ただし、その時期は「皆が思うより少し遅れて来る」と分析する。 「アメリカで言えば、突発的なリスクとして私が懸念しているのはトランプ大統領にかけられたロシア疑惑。側近が続々と逮捕されていますが、大統領の辞職に及んだら大恐慌の引き金になりかねません。逆にそれさえ起こらなければ、’19年に限って言えば株高のシナリオも考えられます。『恐慌が来るぞ』と皆が身構えているうちは来ませんし、複数の指標が“これから”であることを物語っています」  エミン氏が注視するのは、アメリカの国債利回り。短期と長期、2つの金利差の相関から景況感を読み解けるのだと説く。 「短期の利回りが長期の利回りを超える『逆イールドカーブ』は景気後退の兆候としても知られ、’19年中にも起こる可能性がある。これが起きたら強力なシグナルとして捉えるべき。また個人的に最も参考にしているマクロ指標のLEI(景気先行指標)とCEI(一致指数)を見ても現時点で景気後退の兆しはない。これらの指標が下向きになってから恐慌は訪れるはず。数値として表れてから半年から2年のタイムラグがあるでしょう」  忍び寄る恐慌を前に、我々は何をすべきか――
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