再配達を減らすことも、アイドリング問題解決に繋がる
トラックドライバーがこうした「無駄なアイドリング」をし続けなければならない根本的な原因は、「トラックステーションなどの休憩所の少なさ」と、「早着(予定より早く到着すること)を受け入れない荷主第一主義の体制」にある。
現在、トラックドライバーが心置きなく休憩できる「トラックステーション」は、全国で約30か所しかない。宿泊施設が完備されているところで絞ると、その数はさらに少なくなる。
そんな状況下、延着(時間に遅れること)だけでなく、早着すら許されずに近場で待機させられれば、行き場のない彼らは、嫌でも路上でアイドリングをしたまま足を上げて休憩せざるを得なくなるのだ。
一方、アイドリングで出される「排気ガス」をなんとかせねばならないのも事実で、これらの現状を受け、各物流業者側は「デジタルタコグラフ(運行記録計)」でドライバーのアイドリング時間を計測したり、アイドリングストップ機能の付いたトラックを取り入れたりと、ドライバーに不必要なアイドリングをさせないよう努めている。
国土交通省やトラック協会も「排ガス規制の強化」や「車載用冷暖房機器の購入に対する助成金の交付」など、様々な面からトラックの排気ガス削減に取り組んでいる。
また、こうしたトラックの排気ガス削減に関しては、我々にもできる部分がある。
「再配達」の発生を減らすことだ。
同省によると、EC利用の増加に伴い、2017年に国内で配送された荷物の総数は42.5憶個。ドライバー1人が1日で運ぶ荷物の量は150~200個で、全体の取扱個数のうち2割が再配達だ。
これは年間9万人のドライバーの労働力に匹敵し、トラックの排気ガスは年間42万トン分に相当する。
トラックドライバー自身も、できれば人の邪魔になどなりたくないし、無駄なアイドリングもしたくはない。待ち時間くらい足を伸ばせるところで休憩したいのだが、それができないのが、日本の物流の現状なのだ。
日本の貨物輸送の約9割を担うトラック。
彼らの存在や行為を問答無用で「邪魔だ」「野蛮だ」とするのは、あまりにも他人行儀すぎると筆者は思う。
【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。日本語教育やセミナーを通じて得た60か国4,000人以上の外国人駐在員や留学生と交流をもつ。滞在していたニューヨークや韓国との文化的差異を元に執筆中。