暴行事件で現行犯逮捕された若者
タイは2018年に入って急激に治安が悪化しているように感じる。麻薬に絡んだ摘発が多くなっていることや、身近なところで強盗などが多発するようになった。
これまでのバンコクではギャングや貧困層の犯罪者たちは、例えば強盗などのわりと暴力的な犯罪ではあまり外国人をターゲットにしてこなかった。
タイはインドのカーストほどではないが、暗黙の了解のような、経済的なクラス分けがある。富裕層御用達の飲食店に低所得者層が足を運ぶことはないし、その逆もそうである。外国人はその序列から外れているため、富裕層の店に身なりが普通の外国人旅行者が訪れてもタイ人は気にしない。犯罪も同じで、外国人は違う世界の存在ということで、強盗などで金品を奪うことはほとんど起こっていなかった。数年前、日本人を襲った強盗が逮捕された際の言葉がそれを表していた。
「外国人だとは思っていなくて……」
タイは多民族国家で中華系も多い。そのため、アジア人である日本人は襲われてしまう可能性はなくもない。いずれにしれも、襲われる場合、深夜の人気のない時間帯、あるいは辺鄙な場所だったといった事情もある。
しかし、2018年後半は特に日本人が強盗被害に遭う時間が連続して起こった。しかも、日本人が暮らすエリアでの話だ。
2018年10月、タイの報道によればふたりのタイ人男性が連続強盗容疑で逮捕された。彼らは同年8月から10月にかけて日本人を中心とした外国人を狙って強盗をしていたのだ。報道では日本人3人、外国人2人の被害者が出ている。手口はひとりでいるところを狙い、モデルガンで脅すのだが、場合によっては暴行して金品を奪っている。また、バンコクで発行される日本語無料誌のサイトでは、自営業の男性がひとりでいるところを襲われたと報告されている。
注目すべきは、この事件は外国人が多い住宅街や歓楽街で起こっていることだ。これまでのバンコクは郊外などの辺鄙な場所に迷い込みさえしなければ安全だったが、今や強盗たちはそこかしこにいるということになる。しかも、これまで狙っていなかった外国人がターゲットになるのだ。
日本人居住エリアの近くにスラムがあり、ここの若者がひったくりをしているという話もある