米国がグアイドーを介してベネズエラへの支援をより一層強化しているのと併行して、ラテンアメリカ、欧州連合などからもグアイドーを暫定大統領として支援を明確にしている。その一方で、マドゥロといえばキューバ、ロシア、中国、ニカラグア、ボリビアが明確な支援を表明しているだけだ。エル・サルバドルはつい先日の大統領選挙で現政権が敗退して次期大統領からの支援は得られなくなることは明確になっている。
マドゥロを支援している国で最後まで支援し続けるのはキューバだけであろう。マドゥロがベネズエラから姿を消すことになると、キューバ経済は大きく後退するからである。
かつて、ソ連が崩壊した時にキューバは極度の経済後退を余儀なくさせられた。マドゥロ政権が倒壊すれば、それと似たような事態にキューバは陥ることになることが宿命づけられているからである。
このような情勢の中で、2月12日付けで米紙ウォール・ストリート・ジャーナルがグアイドーを支える側近のカルロス・ベッチオと彼のチームが中国と秘密裏に接触していることを報じたというのがスペインからラテンアメリカ情勢を報じている電子紙
『Alnavío』(2月23日付)で明らかにされた。同電子紙は、中国外務省の報道官がそれを早速否定したが、<1週間前に別の報道官が接触していることを肯定した>と報じている。
そして同電子紙は、さらに次のような内容を報じた。
オックスフォード大学国際政治部のマリヘン・ヒメネス・モラレス博士が「秘密外交は秘密であらねばならない」と言及しながらも、「グアイドーの側近と接触があったはずだ」と肯定した。しかし、「中国は(まだグアイドーとの接触が)安全だという確信がないので、この接触が明るみになることに否定的だと見ているようだ」と指摘した。そしてモラレス博士は「キーはグアイドーが中国に信頼されることだ」と強調した。
ベネズエラは中国に200億ドル(2兆2000億円)負債を抱えているということで、「ベネズエラの石油の産出が発展性があるようにすることに中国は強い関心をもっている」と博士は述べた。それはロシアそして米国にとっても同様で、グアイドーはそれを軌道に乗せることを『Rusia Today 』のインタビューで明らかにしたという。
双方の接触で、ベネズエラから中国への返済に暫定期間を設けるということも議論されたという。しかし、「中国はマドゥロの方とも接触しているはずだ」と博士は述べた。
ベネズエラの国民の9割はもうマドゥロを支持していないことから中国が今後もマドゥロを支え続けることは非常に複雑だ。しかも、博士が指摘するに「マドゥロが正統な大統領でないとなると、中国政府そして中国の企業にとっても問題を生じさせることになる」ことを挙げた。
グアイドーは、中国が誰よりも先にマドゥロが暴利をむさぼっていたことの証人でもあることを中国に促して、マドゥロから離れることを誘っているそうだ。
このようなことから、同電子紙によると「中国はグアイドーに賭けることに決めることは近い」と博士は結論づけているという。
中国がマドゥロへの支援を放棄すれば、ロシアも同じような行動を取るはずである。
結局、マドゥロは亡命を余儀なくさせられる可能性が高くなる。実際、亡命の可能性が既に生まれているという。その第一候補はキューバになることは以前より言われている。しかし、それ以外にも他3か国あるのがブルームバーグが指摘しているのをアルゼンチン紙
『LA NACION』(2月12日付電子版)が報じた。その国とは、キューバ、ロシア、メキシコ、トルコと挙げた。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身