―― 「その他」の内訳はどのようになっているのでしょうか。
明石:内閣府はGDP改定から1年以上経過した2017年12月22日になって、やっと内訳表を公表しました。しかし、内閣府自身がこの内訳表について「幅をもって見る必要がある」と言っているので、これは「
内訳表に近いもの」と見るべきです。
この「内訳表に近いもの」にも不自然な点がたくさんあります。たとえば、「
建設投資」という項目があります。内閣府の説明によると、建設部門の産出額の推計手法を、これまでのインプットベースによる推計手法から、「建設総合統計」などを用いた工事出来高ベースによる推計手法に変更したため、数値が変わったのだそうです。つまり、
建設に関する支出を、入り口ではなく出口で補足するようにしたということです。
この数値を見ると、2007年度から12年度まで6年連続でマイナスになっており、平均するとマイナス約1.4兆円になります。この期間には民主党政権時代がすっぽり入ります。他方、アベノミクス以降の2013〜15年度の平均値はプラス約2.3兆円です。2007年〜12年度とアベノミクス以降では平均して約3.7兆円もの差がついているのです。
建設投資の推計手法も変更され、アベノミクスには好都合な結果に
また、「
飲食サービス」という項目にも不自然な点があります。内閣府の説明はわかりにくいのですが、持ち帰り・配達飲食についてバラバラに記録されていたものを一つの項目にまとめた上で、家計消費に対する配分を変え、さらに手数料も加えたということのようです。
これもまた90年代を通して低く、1998年度はマイナスになっています。他方、
アベノミクス以降は大幅にかさ上げされています。
飲食サービスの算出方法も変わり、アベノミクス以降大幅に嵩上げ
さらに注目すべきは、家計最終消費支出です。『データが語る日本財政の未来』の中で詳しく分析しましたが、家計の消費に関する指標としては、総務省が公表している「
家計調査」というものがあります。この家計調査に基づいて計算した数字と、改定後の家計最終消費支出を比較すると、2014年までは相関関係にあるのですが、
2015年以降は大きく乖離しているのです。
家計最終消費支出でも2015年以降は改定によって大幅な乖離を見せるように
内閣府は2015年度の数値について、「詳細な資料をもとに推計し直したところ、家計消費が伸びた」と説明しています。しかし、
家計調査の結果と大きく乖離しているわけですから、疑念は残されたままです。おそらく何らかの方法でかさ上げがなされているはずです。
いま一番取り上げるべきはこの問題です。野党の方々にはぜひともこの点を追及してもらいたいと思います。
(聞き手・構成 中村友哉)
明石順平(Twitter ID:
@junpeiakashi)
あかしじゅんぺい●弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業後、現職。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。ブログ「
モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人