山本実千代さん。両親は元競艇選手。大阪でひとり親家庭に育ち、中学時代は“スケ番”。中卒で就職し、さまざまな職業を経験した
「どこにも行くとこがなくて、行政も何もできなくて、うちで一緒に暮らすしかなくなった子たちはさ、みんな一緒。大人を信じていない。『周りはみんな敵』という目をしている。男女関係なく。被虐待で来た子も、不登校の子も、障害のある子も、健常の子も」
そう語るのは、山本実千代さん(57歳)。石川県金沢市で、スナック経営、介護ヘルパーなどの仕事を経て、40歳の時に子どもと親の支援施設「日常生活支援サポートハウス(通称:サポハ)」を設立した。これまで20年近く活動し、100家族以上を支援してきた。
「設立」といっても、立派な組織や施設があるわけではない。助成金や補助金など何もない。サポハは法人格のない任意団体で、築75年の小さな借家が活動場所で、山本さん自身も、保育士、社会福祉士などの資格を持たない“普通のおばちゃん”だ。
一緒に暮らしているうちに、どうすればいいかが見えてくる
「サポハでなにをするかって? 一緒に生活して、その子を感じながら暮らしていると、その子がいい方に行くにはどうすればいいかが少しずつ見えてくるから、それを繰り返しているだけ」と山本さんは語る。
「専門家の理屈や、教科書に出て来る“受容”とか“傾聴”とか、そんなこと言ってられん。腹が立つときはホントに腹が立つしね。母親が我が子を育てるのと同じよ。がむしゃらに体当たりでやっていくだけ。半年たったくらいでお互いをわかっていって、1年たったら信頼関係が持てる。本当にその子が見えるまでは、だいたい3年かかるね」
サポハは、山本さんの自宅でもある。彼女はプライベートをなげうって、頼ってきた子どもや家族と一緒に暮らしている。それどころか、家事をていねいに教えたり、病院や相談機関につきそったり、役所の手続きを代行したり、親代わりで学校へ行ったり。何だってやる。