神戸の中学生には給食がなかったとか知ってた?――地方の10大ニュース

オバタカズユキ
 年末になると、さまざまな媒体や組織が、今年の10大ニュースを発表する。2014年はどんな年であったか、あらためて振り返ってみようというわけだが、アベノミクスとかSTAP細胞とか号泣議員とかのニュースは、振り返っても実はあまり面白くない。さんざん繰り返し報道されたからでもあるが、それらは全国民的に共有できても、個々の生活に直結している話題ではないからだと思う。ネタが遠すぎて、メディアの中で完結している情報以上のものではないのだ。

写真はイメージです。 chris_harber

 10大ニュースは小ネタのほう面白い。業界別や趣味の分野別なども悪くないが、ココでは地方の10大ニュースで引っ掛かりを覚えたものを探ってみることにする。地元では知られた話でも、よその者には「なにそれなんで?」というニュースをじんわり味わいたい。

 まず、検索をかけてすぐ目にとまったのは、神奈川新聞のWebサイト「カナコロ」にあった<藤沢と茅ケ崎が市10大ニュース発表>という記事だ。両市がそれぞれ市民に投票してもらって集計した地元のニュースランキングを紹介している。

 茅ヶ崎市の10大ニュース1位は<米ハワイ州ホノルル市との姉妹都市協定締結>で、2位は<JR東海道線茅ケ崎駅の発車メロディーがサザンオールスターズのヒット曲「希望の轍(わだち)」に変更されたこと>。いかにも湘南らしくてイカしてますね、とだけコメントしておく。
 
 ただし、だ。同じ湘南エリアのニュースでも、藤沢市民が1位に選んだ<雑誌社のアンケート調査「主婦が幸せに暮らせる街ランキング」で全国トップとなったこと>はちょっと意外だ。というのも、藤沢市には日本一の来客数を集める海水浴場があり、そこは若さを持て余したギャルとチャラ男が大音量のダンスミュージックではしゃぎまわる砂浜として知られた名所。その自由すぎる状況にたまりかねた市が、去年の夏から海の家での音楽放送を全面禁止にしたぐらいだ。筆者が若かりし頃も暴走族のメッカとして有名で、よその者からすると、正直、「藤沢? あ、ヤンキーの」といったイメージが強い。

 しかし、地元の主婦たちには大満足の街であるということなのだ。アンケート調査を実施したのは、学研パブリッシングのアラサ―ママ向けモノマガジン「aene(アイーネ)」。ランキング発表のサイトで確認してみると、こう書かれていた。

<見事、1位に輝いたのは、神奈川県 藤沢市! HQ得点のバランスがトータルで良い中でも、「暮らし」と「家族」の幸せ度が特に高い結果となりました。海沿いの穏やかな気候と都会の利便性をあわせ持つ郊外型の環境で、子育てをエンジョイしているママたちが多いようです★>

「HQ得点」というのは、雑誌編集部がマーケティング研究者と共に<衣・食・住、子育て、心の充実、モノやお金の所有などあらゆる角度から幸せを指数化>したものだそうで、藤沢市はその総合ポイントで3位の西宮市(兵庫)、2位の稲城市(東京)を抜いてトップだったのだ。コメント文の最後につけられた「★」印にヤンキー的な何かを感じないでもないが、何的であろうが幸せ日本一の街だ。こんど藤沢市にお邪魔する機会があったら、地元ママたちのエンジョイ顔をしかと確認したい。

 お次は、全国の県庁所在地の中で最も人口が少ない鳥取市の<平成26年 鳥取市政10大ニュース>。1位は<新しい市政の実現に向け、深澤市政がスタート!>とありきたりなニュースだったが、2位の<世界一の一斉美!50周年を迎えたしゃんしゃん祭の中でしゃんしゃん傘踊りが世界記録を樹立!>とはこれいかに? 

 不勉強で何も分からないから小調べすると、このニュースは全国的に報道されていたようだ。たとえば「テレ朝news」は動画つきでこう解説

<「鳥取しゃんしゃん祭り」は約50年前から毎年開かれている伝統行事で、今年は1700人余りの参加者が傘踊りに参加し、ギネス世界新記録に挑戦しました。この記録は、傘を使って5分以上の間、同時に踊る人数を競うもので、これまではルーマニアの1461人が最高記録でした。鳥取市民らが参加したしゃんしゃん祭りでは、最終的に1688人が参加人数として認められ、ギネス世界新記録として認定証が贈られました。>

 動画冒頭で大映しされている深キョン似の踊り子に見とれた。だって、衣装が全身黒ずくめにピンクのアクセント入り。なるほどこれがマイルドヤンキーか、と勉強になったのだが、的外れな感想だったらごめん。

 それにしても地方ニュースには発見が多い。神戸市も<市民が選んだ神戸市政10大ニュース!>を発表しており、市内にある先端医療センター病院で実施された<iPS細胞を用いた世界初の移植手術の成功>が1位になっていたが、3位の<中学校給食の一部開始>がなにげにヘン。Webサイト「神戸新聞NEXT」には<デリバリー方式の学校給食スタート 神戸市立中学33校>とある。てことは、それまでどこにも給食がなかったのか。

 市の公式サイトをよく読むと、神戸市立の中学では弁当持参が基本で、持参できない場合に限り「弁当販売制度」を実施していたようだ。なぜ給食がないのか。浦上忠文市会議員のブログに、<神戸市「七不思議」のひとつです>とあるけれど、公立中学で給食が出るのは当然の話ではないのか。

 かなり気になってきたので、小調べを続けると、完全給食(給食内容がパン又は米飯などと、ミルク及びおかずである給食)の普及率は自治体によって相当バラついている。最新データとなる2012年度の「学校給食実施状況調査」によれば、公立中学校で完全給食を100%実施しているのは、千葉、富山、愛知、香川の各県のみ。千葉県出身の筆者には驚きなのだが、神戸市のある兵庫県は53.8%だし、その隣の大阪府に至っては14.7%、先進県イメージの神奈川県も24.9%しか実施していない。知らなかった。

 これじゃ大人になっても給食の思い出語りで盛り上がれないじゃないか。というか、この手の話が押し寄せてくるたびに、大阪や神奈川の出身者はどんな気持ちになっていたのだろう。さぞ居心地が悪かったろうと給食トーク好きとして申し訳なくなるが、違う可能性もある。小学校では全国的にだいたい100%かそれに近い率で完全給食が実施されているので、「給食はランドセル時代までのものでしょ。中学給食ネタとかそれダサくない?」と千葉県出身者他の思い出語りは笑って聞き流されていたのかもしれない。

 さて。それぞれの地方10大ニュースをじんわり味わっていくと、あっという間に時間が経つ。当コラムも長大なものになってしまうといけないので、他にいくつかポンポンと並べておしまいにしよう。

 ここまで取り上げてきたのはゆるめのニュースばかりだったが、もちろんシビアな話題が上位を占めた地域もある。例えば、普天間飛行場の辺野古移設などの基地問題で揺れる沖縄県は、地元紙の沖縄タイムスが10大ニュースを選定し、1位が<翁長新知事が誕生 移設反対候補 相次いで勝利>、2位が<政府、移設作業を強行>という結果。福島県では福島民報社の読者が10大ニュースを選定し、1位は県内で相次いで開催された<復興支援イベント>で、2位は<難航する汚染水処理>、<人気漫画「美味(おい)しんぼ」の鼻血問題も票を伸ばした>とのことだ。

 一方で、大都市に目を向けると、産経新聞の<編集部が独断で選ぶ東京10大ニュース>では、1位<舛添知事誕生と猪瀬氏略式起訴>と政治ネタなのだが、なんだか間抜け。この問題で思い浮かぶのは、何と言っても都議会で5000万円の現金がカバンに入らず四苦八苦する猪瀬氏の姿、だからだろう。大阪日日新聞は<記者が選んだ大阪10大ニュース>を1日に1つずつ紹介。初日は高校野球ネタ、2日目がユニバーサル・スタジオ・ジャパンのネタ、3日目が超高層ビル「あべのハルカス」ネタ、という調子でなんだか平和だ。

 いずれにせよ、各地方の10大ニュースには、地元ならではのリアリティがにじみ出ている。この年末年始は9連休やガソリン価格低下などで国内旅行が活発になるとのことだが、行先が決まっている方は、その地域の10大ニュースをあらかじめ調べておくとよいだろう。地元民とふれあう際にネタ振りすれば、「いやいや、ホントに大ニュースだったのはね」とさらに味わい深い話を引き出せるかもしれない。

<文/オバタカズユキ

おばた・かずゆき/フリーライター、コラムニスト。1964年東京都生まれ。大学卒業後、一瞬の出版社勤務を経て、1989年より文筆業に。著書に『大学図鑑!』(ダイヤモンド社、監修)、『何のために働くか』(幻冬舎文庫)、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)などがある。裏方として制作に携わった本には『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』(ソフトバンク新書)、『統合失調症がやってきた』(イースト・プレス)などがある。

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