グアイドー暫定大統領体制をいまだ認めぬロシアだが……
ベネズエラの国民議会からファン・グアイドーが暫定大統領として米国を筆頭に世界の主要国がそれを承認したということを受けて、ロシアはマドゥロ大統領の存続そしてベネズエラの将来をかなり懸念しているようだ。
ロシアはこれまで31億5000万ドル(3470億円)をベネズエラ政府に貸与しており、3月末には1億ドル(110億円)の返済が迫っているが、プーチン大統領は、恐らくマドゥロはその返済はできないであろうと見ている。そのため、ロシアの損失を最小限に留める意味でマドゥロとの交渉で20トンの金塊をその担保として受け取るという形にしたものと思われる。(参照:「
Diario Financiero」)
余り知られていないが、ベネズエラは金の埋蔵量では世界で4位に位置している。年間で120万オンス(38キロ)の産出を今後予定しているという。(参照:「
Tele Sur」)
しかし、原油の産出量が大幅に減少しているのと同様に、金の産出も後退している。しかも、米国からの制裁で原油からの売上の資金入手も困難を伴うようになっている。そんなことから、1月に英国銀行に預けている<12億ドルに相当する金塊>を取り戻そうとしたが米国政府からの干渉で拒否されたという出来事もあった。(参照:「
Perfil」)
グアイドーの暫定大統領としての存在が次第に重要度を増している現在、ロシアがマドゥロの政権を維持するための資金支援または軍事支援を続ける可能性は薄いと多くの専門家は観ているという。しかも、プーチン大統領を失望させたのは、昨年ロシアからベネズエラの財政再建の為に財務省の官僚に再建プランを持たせてカラカスに派遣した時に、そのプランをマドゥロは、その改革は余りに過激だとして拒否したことだという。これが要因となって、ロシアは別のオプションを探すことを模索しているようであるが、ロシアは暫定大統領としてのグアイドーの存在を以前否定し続けている。(参照:「
Infobae」)
しかし、マドゥロの大統領としての終幕が近づいているとプーチン大統領は見ているように思われる。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身