続いて、「女性によるインディのロック」。実は今、このジャンルがもっとも高く日本人が成功する可能性を秘めているところだ。なぜなら、現在アメリカのインディ・ロックのシーンでは、「アジア系女性のシーン」というものが大きくなり、一番ホットなものとして注目されているからだ。
そのシーンを牽引している存在が、日系アメリカ人Mitsuki(ミツキ)だ。日本在住経験もあり、日本語も堪能な彼女は‘16年あたりからニューヨークを拠点に注目されはじめ、‘18年のアルバム『Be The Cowboy』は全米52位、全英64位のヒットになった。これにとどまらず、この年の世界の批評誌の年間ベスト・アルバムで1位、もしくは2位に選ばれることが続出するほど評価されている。
この成功に韓国系のジャパニーズ・ブレックファストやフィリピン系のジェイ・ソム、そしてMitski同様に日系アメリカ人のササミが続きつつある。
そして、この流れに恩恵を受けそうなバンドがChaiだ。名古屋出身の4人組ガールズ・バンドの彼女たちは、国際的にも通用するシャープなポストパンク風のグルーヴセンス、欧米の音楽リスナーが「日本のアニメ的」だと認識しやすいハイトーン・ヴォーカル、そして「エイジアン・ガールズ」のイメージを逆手に取った戦略的なファッション・センスを誇っている。これらは‘17年に日本で話題になった直後、欧米でも注目を浴びた。
さらに現在世界のロック界でもっとも影響力のあるウェブ・メディア、『ピッチフォーク』の興味をも引いている。現在、同サイトでは3月15日に欧米でリリースされる彼女たちのセカンド・アルバム、『Punk』に合わせたプロモーションを積極展開中だ。
日本のガールズ・インディ・バンドでは、おとぼけビーバーやTricotなども海外進出しているが、Chaiの成功いかんによっては、彼女たちが一群となった「シーン」として世界に紹介されることも決して夢ではない。
また、R&B/ヒップホップのシーンでも可能性は開かれている。アメリカにおいて、アジア系アーティストを専門としたレーベル「
88 Rising」がひとつの見逃せないシーンとして台頭を始めているからだ。
ここからはもうすでに、子供時代を大阪で過ごした日本人シンガー、Jojiがアルバム『Ballad 1』を全米総合チャートで3位まで上昇させるビッグ・ヒットを放っている。彼はオーストラリア人とのハーフで、アメリカを拠点に英語作品で長く活動しているため気づかれにくいが、国籍選択は日本であることを見逃してはならない。
また、88 Risingの所属ではないが、シカゴのラッパーで日本人とメキシコ人のハーフ、Towkioも昨年メジャー・デビューして話題となっている。
次に海外でブレイクするのはいったい誰か? ぜひ注目してみてほしい。
<取材・文/沢田太陽>