── アメリカの意向に従うだけではなく、主体的な立場で日本の防衛の在り方を議論すべきではないでしょうか。そうした議論に基づいて大綱なども定められるべきだと思います。
山崎拓氏(以下、山崎):これまで、防衛問題の議論は、匍匐前進のように、一歩一歩進めてきたのです。私は、1980年代末に防衛庁長官を務めましたが、わが国の防衛政策は、岸信介政権時代の1957年に閣議決定された「国防の基本方針」にその基礎を置いてきました。
その第3項には、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する」と謳われています。さらに、この項に先立ち、国際協調や平和への努力、内政安定による安全保障基盤の確立が謳われています。専守防衛の理念に沿ったものとして、「国防の基本方針」が存在してきたのです。
軍事力に偏重することなく、経済力による内政の安定や外交力など、総合的な力によって、国家安全保障を強化するという発想です。安全保障は総合力によって支えるべきです。
ところが、2013年12月に「国防の基本方針」に代わるものとして「国家安全保障戦略」が定められました。「国防の基本方針」の内容はここに発展的に包含されると説明されましたが、果たして「国防の基本方針」が空文化していないかを、改めて問わなければなりません。
── 安倍政権は、2015年9月に、集団的自衛権の限定行使を認める安全保障関連法案を成立させました。
山崎拓氏(以下、山崎):従来、自衛隊は「海外派遣」止まりでしたが、安全保障関連法によって「海外派兵」を容認する道を開くことになりました。しかも、アメリカの要請があれば、自衛隊が地球の裏側まで行くことになりかねません。安全保障関連法案ももっと慎重に議論すべきでした。