進む「顔認証」テクノロジーの普及。その可能性と危険性を考える

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写真はイメージです 写真/編集部撮影

 ’18年の後半あたりから、日本でも導入や議論が始まった顔認証。五輪まであと1年となり、今年は本格的な利活用が進みそうだ。だが、利便性は向上する一方、プライバシー侵害の懸念もある。技術の進歩と論点を整理した。

日本人の顔データはすでに自由に利用できる状況!?

 人工知能(AI)など先端テクノロジーを駆使して人々の顔を判別する、「顔認証システム」の普及が日本でも徐々に進みつつある。「実は渋谷ハロウィーン事件の逮捕にも活用された」と噂されるほどだった。これに関して警察は明言していないが、羽田国際空港などの出入国ゲートに設置されたり、昨年11月末には、セブン-イレブンが「無人コンビニ」の実験店舗を設置。入店や決済を顔認証で行うテストを開始した。一方、和歌山県では、“顔パス”でさまざまなサービスが受けられるよう、1月から県内の飲食店やホテルで実証実験が開始される予定だ。  なお、これらの実証実験に協力しているのは、同分野で世界トップクラスの技術を誇るNECだ。同社が誇る顔認証技術の精度はほぼ100%。フェイスペイント、もしくは顔の一部が見切れていても認証が可能な優れものだ。海外ではすでに実績を上げており、同社の顔認証技術を活用した防犯システムを導入したインド・スーラト市では犯罪率が27%低下した。  今や顔認証機能はスマホにも搭載され、便利なツールとしてすでに広く利用され始めている。テクノロジーメディア「ロボティア」編集長の河鐘基氏は解説する。 「顔認証システムの重要な構成要素となるAIカメラは近年、着実に発展を遂げています。従来の防犯カメラは、録画した映像を記憶媒体やネットワークを経由して1か所に集め、それを人間が分析する必要があった。しかし、今のカメラには録画データをクラウドに送り、そこで照合して結果を利用者に戻す『クラウド型』や、カメラ内で分析・処理まで行える『エッジコンピューティング型』があります。後者は、画像や録画データを保存せず、顔の中の個人を特定するポイントのみを抽出して送信することもできるので、プライバシー保護の観点からも有用なツールとして期待されています」  米調査会社・マーケッツアンドマーケッツによれば、世界の顔認証関連の市場規模は’22年に現在の2倍の約8570億円になり、日本でも東京五輪に向けて企業や自治体などでの導入が進みそうだ。今年はその始まりとなる「顔認証元年」となるだろう。 「顔認証とその関連技術は、個人を特定するあらゆるシーンで活用できます。決済と紐づけば、キャッシュレスはおろか、クレジットカードの持ち運びも不要になる。また、部屋や金庫の施解錠にも活用され、防犯や人件費削減にも重宝されるはずです」  こう話すのは、最先端のAIカメラ開発などを手がけるAI TOKYO LABの最高技術責任者(CTO)・土田安紘氏だ。 「顔認証の可能性については期待しています。弊社が専門とする小売り分野であれば、再来店した顧客に適切な内容・タイミングでクーポンを送ったりなど、『ワン・トゥ・ワン・マーケティング』の精度も高めることができる。関連サービスの登場に期待している経営者は多いと思います」  さらに顔認証の普及はわれわれの生活をより安全にしてくれる。 「顔認証は大規模イベントの入出場管理や事故防止、電車やバスなど公共交通機関の快適な利用も促すはずです。最近では、中国・上海で顔認証機能を搭載したチケットレスの観光バスが試運転を開始しました。それら都市規模での利活用は、結果的に密集地での混雑を緩和したり、ヒトの流れをスムーズにするなど間接的な経済効果を生みます。今、顔だけでなく体の動かし方を分析する『行動検知』も開発されていますし、それらを組み合わせることで、テロなど犯罪防止から迷子・認知症患者の発見まで、社会に多くのメリットをもたらすでしょう」(河氏)
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