そしてもうひとつ同紙が取り上げているのは、米国は5世代移動通信システム「5G」のファーウェイの躍進がすさまじいのを目のあたりにして、米国の国家の安全保障に危険を感じているとしている。それがハードウエアーとソフトウエアーの領域において諜報活動を容易にするパーツが隠されて内蔵されている可能性があるからだとしている。
この問題の根拠になっているのは、アマゾン・ウェブ・サービシズがネットワーク内に設置する高性能のサーバーに設置するマザーボードを検査した時に仕様にないマイクロチップが組み込まれていたという問題。このサーバーのサプライ業者は国防省やCIAの機器に使用されている。このマイクロチップの挿入は中国で行われていた。これらのことから、内臓されていたマイクロチップが諜報活動を容易にするものではないかということの調査が進められているが、その明確は回答は3年以上経過した今も不明のままである。
この調査結果は明らかにされていないが、2017年に中国諜報情報機関によって中国の企業は国家の諜報活動に支援し協力する義務があるとした国防権限法が承認されている。即ち、中国の企業は国家が情報提供に協力せよとなったら、それに従う義務があるということなのである。これが米国政府にとってファーウェイの存在を懸念する要因なのである。(参照:「
iProUP」)
特に、これから5Gの分野が世界の通信の主流になると、ファーウェイが世界レベルで支配するようになる可能性が強いということ。それは中国を米国の前に優位に立たせることになる。そのため、米国はその飛躍を阻止せねばならない宿命を背負わされているのである。
ところが、問題は欧州連合が米国の意向に沿う動きをしていないのである。5Gに関して加盟国の間で対応が一致していないからである。フランスはファーウェイの5Gを歓迎している。ドイツはファーウェイとZTEの採用を検討している最中である。スペインは明確な姿勢を表明していない。但し、スペインのボーダフォンは今春カタルーニャのカステルデフルス市を基地局としてファーウェイ5Gを導入した。
エリクソンは、5Gが2025年まで6190億ドル(68兆円)の市場と見ているが、2026年には6Gに移行すると見ているという。(参照:「
Publico」)
最近のトランプ大統領は益々専制化している。閣僚や補佐官の意見を聞かずに独断で判断する傾向にあるという。今回の孟晩舟の逮捕についても、トランプがほぼ独断で決めたような雰囲気が漂っている。孟晩舟をこれから長期間カナダに留めさせるのは非常に困難に思える。また、中国に人質2人を取られているカナダが孟の米国への送還を許すとは思えない。いずれ、中国への帰国を容認せざるを得なくなるはずである。
その一方で、一時的にファーウェイが一部の国で排除されるようになっても、それが永続して行くことは難しいであろう。エリクソンとノキアがどこまでそれに対抗できるようになるかである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身