注目される免疫による「ガン治療」。その可能性と課題

ノーベル賞

ノーベル賞を共同受賞した本庶佑氏とジェームズ・アリソン氏 写真:時事通信社

がん治療に新たな可能性。免疫治療法はどう進化するか

 本庶佑・京都大学特別教授が、「がん免疫チェックポイント阻害療法」の一つを発見した功績でノーベル医学生理学賞を受賞した。がん免疫療法は手術、放射線治療、抗がん剤に次ぐ第4の治療法と呼ばれている。国立がん研究センターの中面哲也医師によると、そのルーツは100年以上前にまで遡る。 「以前から感染症にかかった人のがんが小さくなったり、消えたりすることが知られていました」  そこで’70年代に細菌を使って免疫を強める丸山ワクチンなどが作られたが、効果が限定的で作用機序が不明だった。だが、’91年に再度注目を浴びる。

効けばがん細胞を全滅させるまで追い込む、免疫治療薬

「免疫細胞の一種であるキラーT細胞というリンパ球が、がん細胞の表面にあるがん細胞を示すアミノ酸の集まり=ペプチドを見分けて、がん細胞を殺すことが初めてわかったんです」
がん免疫治療薬の作用機序

がん免疫治療薬の作用機序(国立がん研究センター資料より)

 がん細胞を倒した後、キラーT細胞の働きにブレーキをかけないと正常な細胞まで傷つけ、このとき倒し損ねたがん細胞が残っていると、すぐに増殖してしまう。がん免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキ(PD-1やCTLA-4などが知られている)を効かなくする。その結果、キラーT細胞はがん細胞の最後の1個まで全力で倒し続けるのだ。手術では見えない転移は取りきれないし、がんと戦っている周りのリンパ節まで取るために免疫力は落ちる。抗がん剤や放射線治療でもがん細胞をすべて殺すことは難しかった。ところが、免疫チェックポイント阻害薬を使うと悪性黒色腫(皮膚がんの一種)をはじめとするがんの患者の10~30%に効果があり、効果があった患者は長期間生存することがわかった。完治する患者も出てきたのである。
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