介護業界の人手不足を、移民で補うのは“愚策”。枝野幸男氏と藻谷浩介氏が批判

横田一
菅官房長官

安倍政権(首相)の番頭役の菅官房長官。改正入管法成立の“産みの親”だった

 ベストセラー『デフレの正体』『里山資本主義』の著者・藻谷浩介氏(日本総合研究所主任研究員)が「愚策」と酷評した改正入管法が成立した直後から、舞台裏を紹介する記事が相次いだ。12月11日付の『読売新聞』は「外国人材拡大 菅氏動く 『移民でないなら』首相容認」と銘打って首相との直談判が転換点と紹介した。 「(外国人材拡大を)主導したのは菅だ。菅は17年秋、人手不足に悩む介護業界の窮状を知人を通じて知り、放置すれば安倍の経済政策『アベノミクス』の足かせになりかねないと危機感を強めた。17年末、安倍と首相官邸で向き合い、『やらせてください』と直談判した。安倍は『移民政策でないのなら』と条件付きで容認した」  12月14日付の『産経新聞』も「慎重な首相動かした菅長官」と題して「(外国人労働者の受け入れ拡大を)決断させたのは、政権の番頭役である菅義偉官房長官だ」と指摘。首相官邸での介護業界の直訴の場面を次のように再現してみせた。  保守支持層から安倍だけは守るためのプロパガンダに思えなくもないが、菅官房長官が熱心に動いたのも事実なのであろう。

AIの時代に入っても、人手が必要な分野はまだたくさんある

「いくら募集をかけても集まらない」  7月2日、特別養護老人ホーム事業者らでつくる全国老人福祉施設協議会の石川憲会長と自民党の園田修光参院議員は官邸で首相に介護現場の人手不足の窮状を直訴した。 「そんなに足りないんですか」  説明を聞いた首相は、驚きの表情を浮かべた。園田氏らが「外国人労働者の受け入れを拡大できないか」と話すと、首相は小さくうなずき、こう述べた。 「介護現場を担う人々が明るい未来を描けるよう対策していきます」  野党の猛反発を押し切って改正入管法を成立させた大きな要因は、介護業界での人手不足だったというわけだが、立憲民主党の枝野幸男代表は全く違う見方をしていた。11月4日の早稲田祭での講演後の質疑応答で、別の処方箋を示したのだ。 ――安倍政権は移民政策を進めようとしていますが、一方でニートと呼ばれる人が20万人もいて、就職氷河期で非正規雇用の40代50代の方もいると思いますが、そういった人を救おうという政党はないのでしょうか。枝野さんはどのような考えをお持ちなのでしょうか。 枝野:日本は人手不足ではありません。ミスマッチです。まさに高度成長の幻想が残っていて、男性であれば「スーツを着てネクタイを締めてする仕事がいい仕事だ」という幻想から抜け出さない限り、このミスマッチは終りません。ましてや、これからAIの時代に入っていきます。スーツを着てネクタイを締めてする仕事のかなりの部分はAIが換わって、そこの人手はあまりいらなくなります。  でも人手不足の分野はたくさんある。それは、人間の知恵とメンタリテイと物理的な作業がパッケージにならないとできない仕事で、この分野が国内の仕事の場としては大幅に増えていきます。典型が介護、保育、子育てですよね。こういう仕事は機械化をすることで人の負担を小さくすることはできますが、完全にはなくせない分野です。当分、人手不足は続いていきます。  こういう分野の給料が安すぎるからミスマッチが生じる。この分野の賃金を上げて、介護の仕事で一生食べていけて、『介護の仕事をダブルインカムでしていたら子どもに奨学金を借りさせずに早稲田大学に入ることができる』というぐらいの給料を払わないといけないのです。賃金の分配を変えていく社会にしないといけない」  陳情を受けて「介護分野の人手不足の唯一の解決策は外国人受け入れ拡大」と信じ込んだ安倍首相に対して、枝野代表は問題点を把握した上で「介護分野の人手不足の解決策は賃金アップ」という解決策に行き着いていたのだ。
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無視された「島根モデル」
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