もうひとつカルテルに関して常に疑問視されているのは、米国がどこまでメキシコのカルテルの取り締まりに関係しているかということである。というのは、メキシコの麻薬密売が急成長したのも隣国に米国という麻薬の最大市場があるからである。
現在ニューヨークでシナロアのリーダーだったエル・チャポ(ホアキン・グスマン)の公判が開かれているが、シナロアが米国で急成長した背後には米国の麻薬取締局(DEA)の協力があったというのは明らかにされている。
メキシコ紙『El Universal』によると、2000-2012年の間に両者が協力関係にあったと報じている。その協力とは、DEAはシナロアの米国での麻薬の販売を妨害しない代わりに、シナロアはライバルのカルテルの情報をDEAに提供するということであった。2000年から協力期間中にDEAはシナロアのリーダーたちと50回以上の会合を持ったと同誌は主張している。(参照:「
Sopitas」)
となれば、DEAと関係しているのであるから、CIAとも関係しているのではないかという疑問も湧いてくる。
メキシコ北部チウアウア州の州政府報道官がCIAが麻薬の密売をコントロールしているとアルジャージラの取材に答えたことが2012年に報道されたことがあった。しかし、その確証は掴めていないという。
アムロの政治生命を賭けたカルテルとの戦いが始まったのである。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身